5月19日、 貿易に関する不透明感や膨らみ続ける米政府債務、さらに米経済の例外的な強さに対する確信の弱まりが、米国資産に重圧となり、ドルにもその影響が及んでいる。写真は米ドル紙幣。バンコクで2023年1月撮影(2025年 ロイター/Athit Perawongmetha)[ニューヨーク 19日 ロイター] - 貿易に関する不透明感や膨らみ続ける米政府債務、さらに米経済の例外的な強さに対する確信の弱まりが、米国資産に重圧となり、ドルにもその影響が及んでいる。ドルは割高水準からの修正が進み、投資家はさらなる下落余地を見込む。トランプ米政権が今年、強烈な関税措置を打ち出すと、投資家は長年にわたって堅調な値動きを続けていた米国資産の保有削減に動いた。米中の貿易戦争「休戦」に伴って、ドルはしばらく落ち着く局面があったものの、ムーディーズが米国のソブリン格付けを引き下げたことでドル売り圧力は再び高まった。決済会社コンベラの首席FX・マクロ・ストラテジストを務めるジョージ・ベッセー氏は「(ドルは)純粋にバリュエーションの観点から一段と下落する余地が多大にある」と述べ、ムーディーズの格下げで「米国売り」が再燃したと付け加えた。主要通貨に対するドル指数(.DXY), opens new tabは1月の高値からの下落率が最大10.6%を記録した。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、投機筋による足元のドル売り持ちは173億2000万ドルと、2023年7月以降の最大規模に迫っている。こうしたドルの弱気ムードが漂う背景として、歴史的な高水準で取引されてきたという状況が挙げられる。1月のドル指数は過去20年平均の90.1から22%も上振れ。現在でも過去20年平均に比べて約10%も高く、大幅な下げ余地が存在する。例えばさらに10%下がれば、第1次トランプ政権下での最安値圏に沈むことになる。<長期的な懸念>投資家やストラテジストは何年も前からドルが過大評価されているとみなしてきたものの、米経済の強さがネックとなり、ドル先安に賭ける取引は何度も不首尾に終わっている。ところがそうした構図に変化が起きる可能性が出てきた。スタンダード・チャータードのグローバルG10FX調査責任者を務めるスティーブ・イングランダー氏は、最近の幾つかの貿易合意が外国為替市場をある程度平穏にしたかもしれないが、それで米国が直面する長期的な信認問題が解決したわけではないと指摘。「ドル安のストーリーは終わっていない」と主張した。投資家の間では、米国の長期的な財政状況も懸念されている。トランプ大統領が目指す減税措置の延長が実現すれば、向こう10年で米国の政府債務は3兆-5兆ドル上積みされるというのが専門家の見立てだ。ドイツ銀行のグローバルFX調査責任者を務めるジョージ・サラベロス氏は「米国資産購入意欲の減退と非常に高水準の赤字が固定化された米財政プロセスの組み合わせは、市場を極めて神経質にさせている」と記した。<外国人投資家の動き>米国資産は何年にもわたって値上がりしてきただけに、世界中の投資家が保有する米国株や米国債は最近の売りがあっても、なお膨大だ。ただドルがこのところ安全な逃避先として機能しなくなったことで、今後各方面から米国資産への売り圧力が出てくる恐れがある。BNPパリバ・アセット・マネジメントのFXポートフォリオマネジャー、ピーター・バッサッロ氏は「ドルがもはや安全通貨としての働きがなくなり、(リスク)分散化にならないとすれば、本当にこれほど大量に保有すべきなのか」と問いかける。<ヘッジ活発化のリスク>過去10年に及ぶドルの強さゆえに、市場参加者は通貨リスクをそれほど心配せずに米国資産を保有できた。そうした中で、外国人投資家が多少なりともヘッジ比率を高めただけでも、ドルには著しい売り圧力が生じかねない。ヘッジ活動増大は、ドルの直接的な需要を後退させ、フォワード市場でのドル売り拡大をもたらすからだ。中国、韓国、シンガポール、台湾といったアジアの国・地域は、数十年間で蓄積した対米貿易黒字を米国資産に投じ、ドルのエクスポージャーを積み上げてきている。ただ今月初めには台湾ドルが2日間かつてないほど高騰し、投資家が急いでドル買いポジションを解消する際に起きる市場の混乱が浮き彫りになった。ユーリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン氏とジョアナ・フレイレ氏は、アジアの輸出業者と機関投資家が持つ約2兆5000億ドル相当のドルが、ドル相場の急激な下振れリスクを生み出すと警告した。ブランディワイン・グローバルのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は、米国の消費が想定よりも底堅く推移していると認めつつ、ドルの反発に賭けるよりは戻り売りを選択すると説明した。私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab
3月20日、米社会保障局(SSA)が実業家イーロン・マスク氏の「政府効率化省(DOGE)」に国民の個人情報への「無制限のアクセス」を認めたのは、個人情報関連法違反の可能性があるとして、東部メリーランド州の連邦地裁は、社会保障記録の共有を差し止める命令を出した。ホワイトハウスで11日撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)[20日 ロイター] - 米社会保障局(SSA)が実業家イーロン・マスク氏の「政府効率化省(DOGE)」に国民の個人情報への「無制限のアクセス」を認めたのは、個人情報関連法違反の可能性があるとして、東部メリーランド州の連邦地裁は20日、社会保障記録の共有を差し止める命令を出した。地裁のホランダー判事は、DOGEがトランプ政権下で実施している不正や公的支出の無駄に関する調査の一環で「何百万人もの国民の個人的問題」に触れていると指摘。「SSAの不正や浪費、不適切な管理の一掃が公益目的なのは確かだが、政府が法律を順守しなくても良いわけではない」と述べた。SSAの元職員と現職職員がロイターに語ったところによると、DOGEがアクセスしたシステムの一つは、1930年代のSSA設立以来、社会保障番号を申請し発行された全員の個人情報が蓄積されている「重要資産」だという。DOGEはコメント要請に応じなかった。ホワイトハウス関係者は、この判決を批判した。二つの労働組合と民主主義擁護団体デモクラシー・フォワードは、適切な審査や研修を受けずに配置されたDOGEのメンバーが、極めて慎重な取り扱いを要するSSAのデータシステムへのアクセスを要求したとして、SSAとマスク氏、DOGEを訴えていた。原告のデモクラシー・フォワードのペリーマン最高経営責任者(CEO)は、今回の地裁判決はデータプライバシーにとって重要な勝利だと述べた。私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tabLegal correspondent specializing in politically charged cases.