#202305ne 日経エレクトロニクス

働く蓄電池
第3部:技術の今
1万超の電源の"群制御"技術がカギに 電力取引市場はいきなりAI勝負

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VPP事業では、束ねた電力を電力取引市場で取引する技術が重要で、カギになるのはAIだ。

東芝エネルギーシステムズと東芝ネクストクラフトベルケが共同開発したVPPシステム「REBSet」では、発電量予測にスパースモデリングやアンサンブル学習を、市場取引計画作成にはシナリオ最適化AIを用いる。「ニューラルネットのようなブラックボックスよりも、説明性の高い技術を重視した」。

世界のVPP事業者の間に急速に普及し始めているのが2つのAIソフトウェアで、Teslaの「Autobidder」と、米国のVPP事業者であるStemが開発した「Athena AI」だ。

日本では蓄電システムベンダーのパワーエックスが #202303m に発表した自動取引用ソフトウェア「蓄電所AI」がある。強みは「国内にサーバーがあること」。

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第3部:技術の今
1万超の電源の"群制御"技術がカギに 電力取引市場はいきなりAI勝負

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日本で、住宅にある小規模分散型電源を束ねる大規模VPPに挑戦している事業者はいくつかある。

エリナスとKDDIは #202302m 時点で約1万7000件の分散型電源を束ねている。

自ら発電事業も手掛ける電力事業者の自然電力も、VPP事業ではこれまで「個人をターゲットにしてきた」。まだ実証実験ベースだが、既に蓄電池数万台、容量にして約250MWhを束ねている。

日本ガイシとリコーは #202302m VPP事業の新会社「NR-Power Lab」を立ち上げた。強みは、日本ガイシのNAS電池と、リコーのIT技術の組み合わせ。一見関係がないのは「互いに競合しないということでもある」。

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第3部:技術の今
1万超の電源の"群制御"技術がカギに 電力取引市場はいきなりAI勝負

日本でも多数の企業が参入見込みの仮想発電所(VPP)事業だが、その技術的な参入障壁は意外に高い。システムの優劣が、事業内容の選択の幅や成果、収益に直結する。

電力取引市場では、人工知能(AI)も大きな競争軸になりそうだ。技術的に目立つ取り組みをしているVPP事業者やシステムを紹介する。

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VPPでは、多くの場合は1万件以上の分散型電源を束ねながら、各電源を状況に応じて迅速かつ低コストに制御して、それらの電力の合計を狙った値にしなければならない。これは簡単ではない。

現状では、それを避けるように、束ねる対象を比較的規模の大きい発電事業者に絞っているVPP事業者が多い。その典型例がVPP世界最大手の独Next Kraftwerke(ネクストクラフトベルケ)だ。「住宅はビジネスの対象としていない」と明言している。

結果として、住宅など小規模な分散型電源を対象にした商用VPP最大手は、米Teslaになりそうだ。

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第2部:日本の現状
日本でもVPPの準備着々 100社超が参入見込み

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具体的にどれぐらいの利益が出るのか。SBエナジーの試算では、蓄電システムが6MWh、出力が2MWの場合にJEPXで #202007m から1年間アービトラージなどをした場合の取引利益(効果金額)は、年間1021万1000円。蓄電池の単位容量あたりでは、1700円/kWh。

最近の大型蓄電システムの導入費用は約3万円/kWh前後。アービトラージだけでこれを償却しようとすると18年弱かかる。実際には人件費を含む運用コストもあるから、寿命を20年と見ても元を取るのは難しそうだ。

ただし、取引市場は年々拡大しており、AIを使えば年間約4000円/kWhを稼げる可能性も出てきている。この場合、8年弱で導入費用は償却できる。

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第2部:日本の現状
日本でもVPPの準備着々 100社超が参入見込み

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VPPの分散型電源は多岐に渡り、再生可能エネルギー主体のケースもあれば、Teslaのように蓄電システム主体のケースもある。電力取引市場で強いのは後者だ。

日本卸電力取引所(JEPX)の卸電力市場を見ると、再生可能エネルギーの増加に伴って、スポット料金がほぼタダになる時間が年々増えている。逆にスポット料金が高騰した時間帯もある。

再生可能エネルギーは蓄電システムがない限り、出力を別の時間にシフトできない。一方、蓄電システムがリソースの主体であるVPP事業者にとってこの大きな価格変動は、アービトラージのまたとない機会になる。しかも競合は少ない。

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第2部:日本の現状
日本でもVPPの準備着々 100社超が参入見込み

仮想発電所(VPP)は、多数の分散型電源を束ねるという側面をみれば、まさにIoT(Internet of Things)技術。一方、参加者の電気を預かって運用するという側面を見ると、銀行など金融機関の技術"金融テック"そのものである。

出遅れていた日本でも参入環境が整いつつあり、さまざまな本業を持つ企業が多数、このVPP事業に参入しようとしている。

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VPP事業を始めているのは米Teslaだけではない。世界では既に多数のVPP事業者がいる。その中でも"老舗"は、#2011y に事業を始めた独Next Kraftwerke(ネクストクラフトベルケ)だ。

束ねた分散型電源の合計出力も世界最大級で約12.3GW。これは典型的な原子力発電所12基分を超える。一方で従業員数は254人。その人数で15000件超の分散型電源を管理している。

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第1部:TeslaのVPP
テスラがVPPに本腰 中型"発電所"をほぼタダで構築

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太陽光発電システムについては、事業者保有の代わりに無償で家庭の屋根などに導入するサービスが以前からあったが、VPPによってそのビジネスモデルが蓄電池込みでも成り立つようになってきた。

Teslaは「世界では10TWh/年の蓄電システムが必要とされている。#2023y 時点では我々の蓄電池の製造規模はEV用も含めて100GWh超/年だが、目標は同1TWh/年にすることだ」とする。

Teslaは「Megapack」という工場や電力事業者向けの大型蓄電池システムも含めると既に累計16.8GWhの定置用蓄電池を出荷しているが、「まだ始まったばかり」という。

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第1部:TeslaのVPP
テスラがVPPに本腰 中型"発電所"をほぼタダで構築

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再生可能エネルギーの発電出力が大きい時間帯に蓄電し、少ない時間帯に放電する"電力のタイムシフト"を行うと、火力発電システムの設備稼働率は改善する。

その上、VPPは、本来電力系統への連携が主目的ではない発電システムや蓄電システムを電力事業者側が必要に応じて使えるようにする仕組みだ。この場合、電力事業者側にはシステムの導入費用が掛からず、設備稼働率の低さも気にならない。

それでいて電力系統の平準化はできる、電力事業者にとって非常に"おいしい"仕組みだ。そこで浮いた設備の導入費用分と、平準化によって火力発電システムの設備稼働率が改善、つまりは経営が改善した分がVPPの報酬の原資になる。

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第1部:TeslaのVPP
テスラがVPPに本腰 中型"発電所"をほぼタダで構築

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Teslaは、先行してVPPを始めたオーストラリアでの実績から、電気代に月額140米ドルを支払っていた家庭は、太陽光パネルとPowerwallを導入すると、太陽光発電分の電力消費量が減ることで、電気代が月額69米ドルに減るという。

その上Teslaは、VPPに参加するとその報酬が月額130米ドルになり、電気代は月額マイナス61米ドル、つまり月に61米ドルを受け取れるとアピールする。

VPP事業者が積極的な電力の市場取引を始めれば、この報酬はさらに増える見込みだ。「将来的には、年間では2000米ドル/台の報酬を得られる」とも。

VPPで湧いて出てくる報酬の原資は何か。直接的にはVPPで売買する電力の価値の差額だ。ただ、その大元を辿ると、それは電力系統に流れる電力の出力変動を平準化する効果に行き着く。

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第1部:TeslaのVPP
テスラがVPPに本腰 中型"発電所"をほぼタダで構築

米Teslaが沖縄を含む世界各地で、電力事業を本格的に始めた。事業組織名は「Tesla Electric」。サービス内容は「Tesla VPP」である。参加者の蓄電池の電力を束ねて仮想発電所(VPP)とし、その電力を運用して参加者に報酬を出す銀行のようなサービスである。蓄電池の導入コストを、そうした報酬で償却できる「ストレージパリティー」の達成が現実になりつつある。

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Tesla VPPでは参加者保有のPowerwallを、電力会社が電力平準化などの目的で必要に応じて遠隔操作して使う。

つまり、電力系統の電力が余剰気味になった場合は蓄電し、不足気味になった場合は放電して、電力系統に供給する。この放電に対して、Teslaが参加者に1kWh当たり2米ドルの報酬を支払う。