一般ドライバーが有料で客を運ぶ「日本版ライドシェア」で、30日に鳥取県の境港に寄港したクルーズ船の乗客を対象に実証実験が行われました。需要の手ごたえとともに課題も見えました。30日早朝に境港に寄港したクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号。乗客定員が2700人を超える大型客船で、乗客が続々と山陰観光に繰り出しました。しかしバスツアーに予約していない場合、移動手段はシャトルバスかタクシーだけ。10台ほど待機していたタクシーは、あっという間になくなりました。そんな中…。福島睦アナウンサー:港のターミナルを出てすぐの駐車場には、5台の車両。クルーズ船の乗客を対象にしたライドシェアの実証実験がきょうから始まります。4月に国交省から許可を受けた地元の「港タクシー」が、一般のドライバーをアルバイトで募集して対応します。ライドシェアの料金は先払い制で、目的地までのおおよその所要時間に合わせて金額が設定されています。さっそく最初の利用者が…。利用客:「ライドシェア」というさきがけのシステムがここにあるということで、飛び込み客がタイムリーに乗れる、そういうサービスは良い。男性は、予約しているレンタカーを取りに米子空港へ向かいました。※所要時間10分・料金2140円続いては、水木しげるロードに向かうというマレーシア人の乗客。マレーシア人利用客:マレーシアでは『Grab』や『Uber』(ライドシェアアプリ)を使うことが多いので、ライドシェアには慣れている。便利で、会計もしやすい。ライドシェアが浸透している海外の乗客にとっては利用に抵抗はないようです。一方、一般のタクシーと間違える人や料金を聞いて断念する人の姿も多く見られました。皆生タクシー・杉本真吾社長:タクシーが足りなければ、ライドシェアがありますといったところをもう少しこれからアピールしていきたい。どう運用していくか、運賃の面もありますけれども、お客様のニーズをもう少しこれから掴んでいきたい。実証実験は、6月も2回予定されていて、本格運行に向け改善を図るということです。
写真はイメージです Photo:PIXTA少子高齢化による行政サービス負担増と働き手不足で手が回らない今、行政では行き届かない部分を民間企業のサービスが補うケースが出てきている。特に成長途上のベンチャー企業にとっては行政と仕事をすることで「事業の安定性」と「信用」が得られるため力強い支援策にもなるが、その際にお役所特有のズレたビジネスルールが問題になってしまうという。行政と民間企業が協働するために必要な施策とは。※本稿は、古見彰里『公共の未来 2040年に向けた自治体経営の論点』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。コンビニに来店する高齢者の 安否確認を担う「セイコーマート」 北海道全域で個人顧客を対象にサービス展開している企業を2つご紹介したい。1971年創業で札幌市に本社を置くセコマグループ(事業持株会社は株式会社セコマ)は、主力事業としてコンビニエンスストア「セイコーマート」を道内中心に直営とフランチャイズで店舗展開している。一般顧客を会員とする「セイコーマートクラブ」の会員数は567万人以上に上るという(2023年12月末時点)。 人口の少ない地域や離島にも出店し、グループの総店舗数は約1200店舗。人口密度の低い北海道にあって、人口カバー率は実に99.8%。1日の買い物客数は約56万人を数えるというから驚く。 セコマグループは原料生産・調達から製造、物流、小売まですべて自社グループ内で行う「セコマ・サプライチェーン」を構築している。また、クラブ会員の購買POSデータを収集・分析し、新しい商品・サービスの開発につなげている。特筆すべきは、「常連の高齢者が最近買い物に来なくなった」という情報が安否確認にも使えるということ。まさに行政における福祉サービスを民間企業が担っているわけだ。「生協コープさっぽろ」は 家事代行や宅食サービスも運営 もう1社は、同じく札幌市を拠点とする「生活協同組合コープさっぽろ」。道内に100以上の実店舗を構えるほか、北海道宅配シェア1位(2023年同社調べ)を誇る定期配送の宅配サービス「トドック」を通じて、安全・安心を追求した生鮮食品、北海道製造にこだわったプライベートブランド商品などを届けている。 ご承知だと思うが、利用者全員が出資して「組合員」となってサービスを利用するのが生協の仕組みである。コープさっぽろの加入時出資金は1000円以上と負担は軽い(脱退時に全額返金)。1人1000万円まで増資ができ、出資金額に応じて毎年特典がもらえる。現在の出資組合員は約200万人で、道内の81%以上の家庭が利用しているという。加入者1人ひとりが持ち寄るこの出資金を、商品づくりのほか、店舗・宅配事業、小売店舗がない過疎地や買い物困難な高齢者の多い地域を対象にした移動販売車の運営などに生かしている。
少子高齢化による行政サービス負担増と働き手不足で手が回らない今、行政では行き届かない部分を民間企業のサービスが補うケースが出てきている。特に成長途上のベンチャー企業にとっては行政と仕事をすることで「事業の安定性」と「信用」が得られるため力強い支援策にもなるが、その際にお役所特有のズレたビジネスルールが問題になってしまうという。行政と民間企業が協働するために必要な施策とは。※本稿は、古見彰里『公共の未来 2040年に向けた自治体経営の論点』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。
一般ドライバーが有料で客を運ぶ「日本版ライドシェア」で、新たに境港に寄港するクルーズ船の乗客を対象にした運行が始まることになりました。クルーズ船限定の運行は国内2例目です。このクルーズ船の乗客を対象にした日本版ライドシェアは、境港管理組合が、境港に寄港するクルーズ船の乗客が観光で上陸した際の交通手段をより多く確保しようと国交省へ申請していたもので、4月22日付で許可されました。運行日は、乗客定員1000人以上のクルーズ船が寄港する日で、時間は、船の入港1時間後から出港1時間前までとなっています。運行を担当するのは地元の「港タクシー」で、タクシー5台を使って乗客輸送にあたります。最初の実施日は5月30日で、乗客定員約2700人のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の寄港時が予定されています。日本版ライドシェアは、山陰各地でも運行が相次いでいますが、クルーズ船の乗客限定は中国地方では初めて、国内でも沖縄の宮古島に次いで2例目です。
「ライドシェア」が合法白タクってやつか。
名前が悪い気が。
事務所を必要としないレンタカー(タイムズのカーシェア)かと思ってた。
タクシードライバーの高齢化や時間外労働の制限などで深刻化する担い手不足解消の一手として期待されているのが、2024年4月にスタートした「日本版ライドシェア」だ。地方でも運転手不足が続く中、島根・松江市でも、2025年2月から実証実験としてスタートした。一般のドライバーが旅客を運ぶこの新たな仕組みが「地域の足」、地方の交通を守る”救世主”になるのだろうか。「本日はよろしくお願いします。ライドシェアの大塚と申します」はつらつとしたあいさつで乗客を迎えたのは、松江一畑交通(松江市)の新入社員、大塚嗣士さん。2025年2月から「日本版ライドシェア」のドライバーを務めている。予約を受け、向かった先で乗り込んだのは80代の女性。自宅から約2キロ離れた病院に通うため、日ごろからタクシーを利用しているそうだが、この日、乗車したのは大塚さんが乗務する「ライドシェア」の車両だった。大塚さんが乗務する「ライドシェア」は電話での予約が可能で、料金はタクシーと同等。乗車場所から目的地までの距離に基づいて、あらかじめ決められる。「もうメーターを動かさずに行きます。920円で決まっているので」と、大塚さんは改めて女性に説明した。この日が10回目の乗務という大塚さん、「やはりタクシー(ドライバー)は気持ちが良いものですよ。直接、人の役に立っているという、何かダイレクトにくる感じがあります、やりがいが」と明るい表情で教えてくれた。2024年4月にスタートした「日本版ライドシェア」。担い手の高齢化や時間外労働の制限強化に加え、外国人観光客の急増などによる需要増加で一層深刻化するドライバー不足の解消につなげようと導入された。松江市では2025年3月、導入の可能性を探る実証実験としてスタートした。3大都市圏などでは、ドライバー不足が特に深刻な週末や深夜から早朝にかけての時間帯に運行されているが、松江市では、平日午前に導入された。その背景にあったのが、通院のためのタクシーがなかなかつかまらない状況だ。ライドシェアを利用した先ほどの女性も「普段は午前9時から9時半、10時くらいまでは(タクシーの予約が)いっぱい。前日か前々日に頼んでおかないと」と昨今のタクシー事情を嘆いた。こうした地域の事情に合わせて、松江市では、ライドシェアを月曜から金曜の午前7時から11時台に導入。松江一畑交通、第一交通、水都タクシーの3社がそれぞれ3台ずつ運行している。海外で普及が進むライドシェアでは、一般ドライバーがマイカーを使い、配車アプリでマッチングされた乗客を運ぶのが一般的だ。一方、「日本版」では、乗客の安全を確保するため、タクシー事業者の管理の下で運行される。日本版ライドシェアの場合、ドライバーは、バスやタクシーの運転に必要な「二種免許」を取得する必要はない。代わりに事業者が研修などを行って、タクシーと同等のサービスや安全性を確保することになっている。ライドシェアドライバーの大塚さんも出社後、点呼を受け、出発前には車両の整備、点検を行う。乗務前の準備は、タクシーのドライバーと変わるところはない。松江市も、安全運行のため、実証実験期間中はドライバーの採用や研修、車両の整備にかかる経費を1社あたり最大約100万円、助成している。今はライドシェアでドライバーを務める大塚さん、実は、いずれ、タクシーに乗務したいそうだ。「今、第2種免許の取得に向けて頑張っている。旅客のプロとして勉強しなくてはならないので、責任もあるし、必要な知識を身に着けていかないといけない」と意気込む。ライドシェアを入り口にドライバーの経験を積み、将来、二種免許を取得してタクシーに乗務したいと考えている。松江一畑交通の立脇 等社長も「ライドシェアである程度勉強すると、タクシーにスムーズに乗れると思う」と歓迎、「二種免許」不要のライドシェアが採用の門戸を広げ、新たな人材の確保につながればと期待している。 新しい交通の仕組み「ライドシェア」、利用者にとっては、車両の台数が増え、必要な時に確保しやすくなる。乗車距離によって料金が決まる定額制で、あらかじめ料金を知ることができ、安心して利用できるのがメリットだ。一方、事業者にとってのメリットは、何といってもドライバーの確保につながること。ドライバーが足りない時間帯の人手を確保できるほか、シェアドライバーの乗務でねん出された人手で、深夜や早朝など人手が足りない時間帯を補うことができれば、効率的な勤務シフトを組むこともできる。ただ、その一方で、交通事故対策など安全をどう確保するか、また乗客サービスのレベルをどう保つかが課題となっている。地方でのライドシェア導入について、公共交通に詳しい島根大学法文学部の飯野公央教授は「どういう移動ニーズがあるのかを、もっと詳細に検討する必要がある。地域の交通の実態に合わせた交通政策の中に、ライドシェアという仕組みをどう落とし込んでいくのか、考える必要がある」と話し、ライドシェアを鉄道やバス、タクシーなど既存の交通機関と組み合わせることで、地域全体の移動の利便性向上につながる可能性があると指摘した。また、「ライドシェアでドライバーになり、そこで適性を見極めるのは非常に面白い取り組み」だと指摘、ドライバーの「お試し」体験ができれば、長期的な人材の確保にもつながると評価している。ライドシェアでドライバーを確保できれば、地域の足を守ることにもつながるというわけだ。日本の交通事情や社会のニーズにあわせる形でスタートしたライドシェア。さらに「山陰版」として、地域に合った形で広がれば、交通の維持、人手不足の解消といった地域課題を解決する糸口になるかもしれない。(TSKさんいん中央テレビ)