内戦により荒廃しているミャンマーでは、3月28日の大地震で3700人以上が犠牲となった。この国で原子力発電所の建設を予定しているロシア国営原子力企業ロスアトムはロイターに対し、計画を継続すると明らかにした。写真はロシアのプーチン大統領(写真右)に本を贈るミャンマー軍事政権トップのミンアウンフライン総司令官(左)。3月4日、モスクワで撮影された代表撮影(2025年 ロイター)[バンコク 22日 ロイター] - 内戦により荒廃しているミャンマーでは、3月28日の大地震で3700人以上が犠牲となった。この国で原子力発電所の建設を予定しているロシア国営原子力企業ロスアトムはロイターに対し、計画を継続すると明らかにした。ミャンマー軍事政権トップのミンアウンフライン総司令官とロシアのプーチン大統領は3月、小規模な原発の建設に関する合意に署名した。マグニチュード7.7の地震で被災地が壊滅した3週間前のことだった。この地震は同国において、数十年ぶり最悪の自然災害となった。この合意は、ミャンマーに小型モジュール炉(SMR)を建設するための協力に関するものだ。初期段階の発電容量は110メガワット(MW)で、ロシアの国営原子力企業ロスアトムが製造した55MWの原子炉2基で構成される。同社の広報部は建設計画について、電子メールで「3月の地震による影響はない」と回答。「当社は厳格な耐震要件を含む、最も厳しい国際安全性および信頼性基準を順守している」と述べた。重要インフラが機能不全に陥った震災後のミャンマーで、同社が引き続き原子力計画を進める意向であることはこれまで報道されていなかった。ロスアトムはミャンマーの原発で、当初は原子力砕氷船での使用を目的として製造したRITM-200N型の小型モジュール炉を稼働させる予定だ。建設スケジュールや所在地の詳細については一切明らかにしていない。ミャンマー軍事政権の報道官はロイターからのコメント要請に応じなかった。同国では、ノーベル賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏率いる政権を転覆させた2021年2月の軍事クーデターをきっかけに内戦が拡大している。クーデター以前から存在する民族武装勢力に、新たに結成された勢力も加わり、国土の大部分で支配力を失った軍事政権は、ロシアなど数少ない同盟国への依存を強めている。内戦は中国との国境からベンガル湾沿岸まで広がっており、350万人以上が避難を強いられ、農業中心の国内経済は崩壊寸前となった。ミャンマーは現在、ロシアが支援する原発建設計画の資金調達方法を探している。ロスアトムによると「自己資金と借入金の両方が必要になる可能性がある」という。ロシアはバングラデシュやエジプトなどで、低金利の融資を通じて従来型原発プロジェクトに資金を提供してきた。 隣国タイの当局はミャンマーの原発計画を注視している。関係筋によると、建設される可能性があるのは、要塞化された首都ネピドーだという。この都市も地震で大きな被害を受けた。タイ当局によるとほかの候補地は中央バゴー地域と南部のダウェイ特別経済区。軍事政権とロシアはそこで港湾と石油精製所を建設する計画を発表している。ミャンマーは、地震を引き起こす2つのプレートが交わる場所に位置しており、世界で最も地震活動が活発な国の1つだ。<建設資金と人材>東南アジアで初めて原発が建設されたのは1984年、フィリピンのバターン原発(621MW)で、23億ドルの費用をかけて完成した。だが2年後、旧ソ連でチョルノービリ(チェルノブイリ)原発の爆発事故が起きたことを受けて運転が見送られた。フィリピンなどの東南アジア諸国はそれ以来、原子力発電を巡る努力を続けてきたが、ほとんど進展していない。ただベトナムは、福島第1原発事故後、予算の制約もあり2016年に建設計画を中止していたが、24年にプロジェクトを再開している。ロスアトムによれば、ロシアとミャンマーは長年この分野で協力しており、2019年からミャンマーの学生が政府の支援を受けてロシアの大学で原子力エネルギーや関連分野について学んでいる。国際原子力機関(IAEA)によると、従来の大型原子力発電所と違い、小規模原発ではSMRの部品は一体型ユニットとして組み立て、設置場所まで輸送できる。バンコクのチュラロンコーン大学原子力工学部の講師、ドゥニャポン・ウォンサワエン氏は「技術的には何の支障もないと考えている」と述べた上で「むしろミャンマー政府の継続的な取り組みが主な課題になるだろう」との見方を示した。非政府組織(NGO)「国際危機グループ」でミャンマー担当の上級アドバイザーを務めるリチャード・ホーシー氏は、軍事政権は外貨獲得のため、国内での安価な発電に利用できるはずの天然ガスを優先して輸出に回していると指摘。資金難の政権にとって原発建設計画は経済的に意味をなさないとみている。「原子力発電は非常に高額であり、ミャンマーにはそれを賄う余裕は到底ない」とホーシー氏は語った。私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab
4月21日、 22歳から米ウェストバージニア州にある炭鉱の地下深くで働き続けたジョシュ・コクランさん(写真)は、10万ドル台の年収を得て妻と2人で休日には狩りや釣りをする暮らしを送っていた。ウエストバージニア州オークヒルで10日撮影(2025年 ロイター/Adrees Latif)[オークヒル(米ウェストバージニア州) 21日 ロイター] - 22歳から米ウェストバージニア州にある炭鉱の地下深くで働き続けたジョシュ・コクランさんは、10万ドル台の年収を得て妻と2人で休日には狩りや釣りをする暮らしを送っていた。ところがそうした楽しい生活に終止符が打たれたのは2年前、コクランさんが43歳でじん肺(黒肺病)が進行していると診断された時だ。彼は肺の移植手術を待っているところで、酸素ボンベがないと呼吸ができず、妻の手を借りなければ身の回りの行動も不自由になっている。もっとも、コクランさんにとっての救いは、今なお生活費を稼げていることだ。鉱山安全衛生局(MSHA)と国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が運営する連邦政府のプログラム「パート90」のおかげで、じん肺と診断された時点で炭鉱内から同じ勤務先のトラック配車係に配置換えしてもらい、給与水準は維持された。パート90は、じん肺の診断を下された炭鉱労働者を即日、より安全な仕事に異動させることを義務化したものだ。コクランさんはロイターに「パート90の適用を受けられただけで、地下から脱出し、同じ賃金を支給され、解雇されずに済む」と語った。ただ、パート90やその他の炭鉱労働者をじん肺から守るための措置は、トランプ大統領と「政府効率化省」を率いる実業家イーロン・マスク氏が進める大規模な政府職員解雇と政府機関閉鎖のあおりを受け、機能しなくなりつつある。ロイターがこれらのプログラム関係者に取材したり、NIOSHの内部文書を確認したりした結果、少なくともここ数週間で3種類の連邦プログラムが停止したことが分かった。例えば数十年にわたってNIOSHが運営してきた炭鉱労働者に対する肺の健康診断制度は停止され、これに関連する鉱山でのレントゲン検査プログラムも打ち切られた。またMSHAの施設の半数近くがリースを解約する状況で、新たに導入される炭鉱労働者の粉じん許容限度といった安全基準の監督主体も不明確になっている。NIOSHで40年勤務してきたアニタ・ウォルフ氏は「炭鉱労働者にとって壊滅的な状況だろう。誰も炭鉱の監視をしなくなる」と警告した。トランプ氏自身は、かねてから同氏を政治的に支持してきた国内の石炭産業振興を声高に唱えている。今月ホワイトハウスで開催した石炭生産拡大を目指す大統領令署名式には炭鉱労働者を招き「われわれは炭鉱を稼働状態に戻す。彼らは偉大な人々で、偉大な家族を持ち、われわれが愛し、尊敬する地域からやってきた」と強調した。NIOSHを傘下に置く厚生省の報道官は、政府組織の簡素化により、同省は議会が付託した国民を守る取り組みを実行する上でより適切な態勢になるとコメントした。NIOSHの推計に基づくと、米国のアパラチア山脈中央部にある炭鉱地帯で現在働く労働者のうち、じん肺に苦しむ割合は20%と、過去25年で最も高い。長年にわたって採掘されてきた炭鉱で乏しくなった鉱脈に到達するため、岩盤を爆破しているためだ。労働省のデータによると、国内の石炭産業の雇用は約4万3000人に上る。<配置転換手続きも停滞>NIOSHの関係者3人によると、全米でおよそ1000人いるNIOSH職員のうち875人前後が契約を切られた。今月4日付のNIOSHの内部メールには、このため炭鉱労働者のじん肺対策の柱となってきた「健康監視プログラム(CWHSP)」が停止されたと記されている。複数の関係者は、CWHSPの下で炭鉱まで移動トレーラーを派遣し、労働者に対して行っていた検診も中止になったと明かした。車の燃料代がねん出できないことや、レントゲン写真を分析できる専門の疫学者がいなくなったのが原因だ。NIOSHのウォルフ氏は、多くの炭鉱労働者にとってはこの制度が唯一利用できる健康診断だと話す。さらに多くのNIOSH職員が解雇された影響で、じん肺を診断された労働者がパート90の適用を受けて配置換えの権利を得る手続きが滞っている。 炭鉱労働者はレントゲン写真をNIOSHに提出し、じん肺と認定されなければパート90の要件を満たすことができない。だが、ウェストバージニアでは、レントゲン写真を分析するNIOSHの疫学者全てが解雇されたという。そのような疫学者の1人であるスコット・ラニー氏が説明した。ラニー氏はロイターに対して「大統領令が出された結果、より多くの男性が炭鉱で働くようになるとすれば、どのような仕組みであってもそれに応じて彼らは保護されるべきだ」と語った。じん肺患者の代理人をしているウェストバージニアの弁護士は、じん肺のままで粉じんがひどい職場にとどまるリスクは極めて深刻な以上、配置転換は重大な意味を持つと訴えた。<安全犠牲に不満の声>MSHAは昨年、炭鉱労働者の結晶シリカ許容限度を半分に引き下げる新たな規則案をまとめたが、職員削減や施設閉鎖計画を受けて8月からの実施が危ぶまれている。バイデン前政権でMSHAを担当する労働次官補を務めたクリス・ウィリアムソン氏はロイターに対し、同氏が辞任する前の1月時点で、MSHAの鉱山検査官には20人の欠員があっって、既に90人の補充人員を内定していたが、トランプ氏が大統領に就任すると内定が全て取り消されたほか、120人前後が早期退職を勧告されたと述べた。じん肺の専門家は、こうした適切な人員や資源の欠如は、特に石炭採掘活動が拡大するようなら、じん肺がアパラチア山脈の炭鉱で一段とまん延しかねないと懸念している。23年の検査でじん肺と診断された35歳の炭鉱労働者ケビン・ウィークルさんは、石炭増産を望みながら労働者の安全基準を後退させるトランプ政権の姿勢は合理性を欠いていると批判した。「私は共和党員だが、石炭生産を増やし、安全を損なわないようなもっと賢い方法があると思う」と話した。私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tabValerie Volcovici covers U.S. climate and energy policy from Washington, DC. She is focused on climate and environmental regulations at federal agencies and in Congress and how the energy transition is transforming the United States. Other areas of coverage include her award-winning reporting plastic pollution and the ins and outs of global climate diplomacy and United Nations climate negotiations.