読み終わり
●長野まゆみの偏愛耽美作品集
長野氏が好きな作品を集めたものなので、本人はコメントのみ。古い作品をゆっくり、たくさん読みたい人におすすめ。
●ひとりだと感じたときあなたは探していた言葉に出会う
装丁に惹かれて。孤独は誰にでも感じることがありうる感情だけど、これは自分にはまだ早かったかも。難しい文章ではないので、気になる方はぜひ。
#長野まゆみ #若松英輔 #fedibird #読書
夜明けがちかい。まだ街灯がともる川べりの道を、桜蔵(さくら)はひとりで走っていた。暗がりに、湿り気をおびた木の香がただよう。芽吹きの季節は、幹や枝がたっぷりと水をたくわえている。走っている身のうちにも、うるおいが満ちてくるのが心地よかった。
川の流れは、小石を洗いつつかすかな音をたてている。一時は泥のような色をして、いくつもの澱みをかかえこんだ排水路だったが、コンクリートの護岸をとりのぞいた今は、濁りのない水が流れている。