琉球王朝時代から昭和の前半まで、那覇の一角・辻は多くのジュリ(遊女)を擁する遊郭街でした。
戦争が始まり日本軍が駐留すると、ジュリ達は慰安婦として徴用されます。
こちら「遊女(ジュリ)たちの戦争」(2001)は、元ジュリの老女・志堅原トミが、自らの戦中体験を語るという体裁の小説。
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小説とはいえ、複数の元ジュリの証言を基に書かれた、ほぼノンフイクション。
戦時色に染まる花街の様子、慰安婦になる事への戸惑い。
那覇を焼け野原にした10.10空襲、米軍上陸と戦場彷徨、凄惨な同僚達の死。
慰安婦という最も弱い立場の女性にぶつけられる、軍人達の生々しい”本音”。
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著者の船越義彰氏は、1925(大正14)年那覇生まれの詩人・作家。
この本の取材・執筆に5年を費やしたそう。
“天も恨みらぬ 親も恨みらぬ わが生まれだけの 不足やてど”
(天も親も恨みに思わない 私に「生まれ徳」がなかったからだ)
元ジュリの女性が詠んだ琉歌の哀しさに、言葉を失います。
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