
募集中の欧州体験プログラム「サイクリングアカデミー」 欧州で通用する選手を育てるために – チームユーラシア – iRCタイヤ監督、橋川健さんに聞く
ベルギーを拠点に活動する若手育成チーム「チームユーラシア - iRCタイヤ」が若手ジュニア選手を対象に募集する、合宿生活をしながらベルギーのレースを体験する夏の期間プログラムが「サイクリングアカデミー」だ。脚力やレースの走り方だけでなく、人としても大きく成長できるその内容とは?多くの選手を輩出してきたプログラムについて代表を務める橋川健さんに聞きました。2024年度のサイクリングアカデミー。総勢8名が28レースに参戦した photo:チームユーラシア - iRCタイヤiRCがサポートし、今年で実に16年目を迎えた若手育成チームが「チームユーラシア - iRCタイヤ」。アンダーカテゴリーの選手を育てるだけに留まらず、毎年夏にアンダー19、アンダー17のジュニア選手を欧州レースで走らせるプログラム「サイクリングアカデミー」を実施し、「ヨーロッパへの第一歩」を提供している。留目夕陽、門田祐輔、津田悠義など、このアカデミーを経てプロの花を咲かせた選手は数多い。老舗の名門発掘プログラムとして、ハイレベルな欧州レースを体感させ、合宿生活を経ながら挑戦するマインドをジュニア選手に共有してきた。シクロワイアードではチーム統括を務める橋川健さんに、現在2025年夏の参加者を募集している「サイクリングアカデミー」プログラムについてインタビューする機会を得た。実際のレースプログラムやチーム指針、合宿生活、選手として求められることとは、どのようなものなのだろうか?厳しいヨーロッパだからこそ「挑戦」する気持ちが大事欧州レースを体験するチームユーラシア・サイクリングアカデミー ©チームユーラシア「アカデミーの活動を通じて大切にしていることは、単にレースの結果を求めるのではなく、選手一人一人が成長のきっかけを掴んでもらうこと。全然成績や走りが目立たない選手でも、ある時一気に芽吹く時があるんです。だからアカデミーの選考基準には「全日本選手権で何位」という条件は何もない。上を目指す気持ちさえあれば誰だってウェルカムです」と橋川さんは言う。それは、言葉も文化も違うヨーロッパを目指すことが、とても厳しいものだからです。そもそもレースレベルは日本と全く異なるものですし、現地選手が見逃されているような行動を日本人選手がした時に怒られたり、罵声を浴びることも普通にあったり、選手一人ぼっちでやっていくのはメンタル面で相当難しい。「ヨーロッパ選手が普通にこなしているんだからお前もやれるだろ」っていうのはあまりにもキツく、もう少し手を差し伸べてあげる必要があるんです。そこにこそチームユーラシアや、アカデミーの存在意義だと意識しています。チームユーラシア - iRCタイヤの監督を務める橋川健さん。2025年のチーム会見にて photo:Satoru Kato日本人って基本的に消極的なんです。おおよその場合、自分の意見を主張できないし、欧州レースを走ったらアタックもできず千切れ集団でリタイア、というパターンにハマってしまう。だからとにかく僕が言うのは「アタックしろ」「逃げ集団に乗れ」なんです。もともと日本人選手だって脚力はあるんですから、勇気をもってチャレンジして、力の出し惜しみなく走った結果、突破口が開けてくる。日本のレースは消極的に走った方が結果を残せることが多いんですが、それを欧州でやるとあっという間に置き去りです。僕のチームで大事にしているのは、そういう日本の消極性を断ち切って、積極的なマインドに切り替えることなんです。それが海外レースのファーストステップとして大事なことですから。できるだけ多くの若手に欧州挑戦のチャンスを「より多くの人に欧州経験を積んでもらいたい」。それが有望選手の発掘と育成を目標にする橋川さんがアカデミープログラムを通じて目指していることだ。これまで応募のあった選手はほぼ100%ベルギーレースを走り、その経験を元に化けた選手も少なくない。「厳しい世界ですから、レースの走り方や生活面に関しても厳しく指導はします。それで挫けてしまう選手もいますが、一方で価値観やレースに対する取り組みが180度変わって一気に強化指定選手になったり、その後欧州チームに入ったり結果を出す選手もいる。親御さんから『日本に帰ってきても真面目に取り組むようになりました』とメッセージを頂くこともあります。それこそ、私がアカデミーやユーラシアを通じて教えたいことなんです」。1週間で平均2レースを走る 共同生活だから得られる経験と知識共同生活を送りながらレースついて様々なことを学ぶ ©チームユーラシアサイクリングアカデミーでのベルギー滞在期間は平均2週間ほど。1週間で基本2回、多い時には3回レースを走るという濃いレース生活を送ることになる。2024年度は8名が入れ替わりながら6週間で28レースに参戦し、2025年度は7月18日〜8月28日までの期間を前期、中期、後期の3つのグループに分け、参加期間の要望を聞きつつ2〜4週間の間でスケジュールを調整するという。2週間で35〜50万円(為替レートで変更)という費用には現地での生活費や活動費、ジャージ、航空券が含まれる。現地ではキッチン付きのアパートメントの部屋を複数人でシェアしながら生活する。食事は橋川監督の奥さんが担当するが、選手が入れ替わりながら手伝うことで料理や栄養に関して、そしてレース前の食事ルーティンも含めて知識を自然と学ぶことができる。それだけではなく、レースを走ってリカバリー、トレーニング、自転車の整備、移動、またレース...という流れの中で、そのスケジュールも選手自身で決めていけるように指導する。アカデミーで得られるものは、レースでの走り方だけではないのだ。「多分このスケジュールを一人でこなすのはほぼ不可能ですし、外泊をしたことのない子たちだってたくさんくるんです。共同生活をしているからお互いに刺激しあって頑張れる。ただレースを走るだけじゃなくて、集団生活をするメリットが必ずあると信じています」と橋川さんはいう。積極性が強くなるためのカギ橋川さんが重視するのが積極性。アカデミー経験者の多くに身に付くという photo:チームユーラシア - iRCタイヤ「レースで一度もアタックしたことありません、って選手も来るんです。応募して頂く分には全然ウェルカムなんですが、そのままではヨーロッパで絶対に強くなれないどころか、何もしないまま終わってしまう。力づくでも良いから逃げにトライできるように背中を押してあげて、もし逃げに乗れたら認めて褒める。もしその逃げが捕まったら「じゃあ逃げ切るにはどうしたら良かったのか考えよう」って、一歩一歩進んでいくんです。大切なことは、日本に帰っても、例えば絶対集団ゴールになるだろうレースでもアタックする積極性を身につけてもらうこと。本当に結果を出さなきゃいけない以外の90%のレースは、どうしたら逃げられるかだけを考えて走るのが大切なんです。アカデミーを経験した選手は、みんなそれができるようになります。日本レースでアタックのタイミングを読んでレースできるようになった選手は、欧州に戻ってきてもセンスが良くなっているからポンと結果を出しやすくなるんですね。だから、日本のレースでも学んで実践する機会はたくさんあります。ただ結果だけ求めてレースを消化するんじゃなくて、どれだけ逃げて、どれだけレースを組み立てられるかができるんです。欧州を目指すのであればそういったマインドとプロセスが大事です。アカデミーの活動を通して、そういうことを選手に伝えていきたいと考えています」。吉岡直哉と風間大和 チームユーラシア-iRCのメンバーの欧州経験談チームユーラシア-iRCのキャプテンを務める吉岡直哉。かつてユーラシア所属時代に欧州プログラムを経験した photo:Satoru Kato2014年にエリートカテゴリー1年目という少し遅いタイミングで欧州を経験したのが、那須ブラーゼンなどを経て、2025年に11年ぶりにチームユーラシア-iRCのメンバーに戻った吉岡直哉。インタビューに途中参加してくれた元チームキャプテンに、当時の活動について聞いてみた。「当時はベルギーのハイアマチュアレースであるケルメスを中心に走ったんですが、日本で言えばUCIレースくらいにレベルが高くて驚きました。レーススピードが高いから、例えば風の読み違いひとつでレースが終わってしまう。だから、レース中は細かいところまで気を配って走るというマインドが身につきましたね」と言う。アタックしてレースを作っていく、吉岡自身のレーススタイルは橋川さんの教えによるもの。「アカデミーやユーラシアの活動で得たものは大きかったですね。向こうのレース環境はすごく良いですし、得るものも多い。でも一方で、アマチュアレースであっても本当に厳しい世界ですから、修学旅行のような気持ちで目指す場所でもありません。厳しい言い方になってしまいますが、甘い気持ちが少しでもあると気持ちが折れてしまう世界です。でも、今の国内ジュニア選手って僕の時代(10年前)と比べてすごくレベルが上がっていますし、海外で通用する可能性も高いんじゃないかな、って思いますね。上を目指す、本当に強い気持ちがあれば、サイクリングアカデミーの活動を本当に良いものにできると思います」。14歳でアカデミーを経験した風間大和 photo:チームユーラシア - iRCタイヤ吉岡と違って、14歳という若いタイミングでアカデミーを経験したのが、チームユーラシア - iRCタイヤのメンバーとしてJプロツアー2年目、U23の1年目を過ごす風間大和。「人生初海外でしたからチームのサポートがあったことは本当に助かりました。食生活や精神面での支えはもちろんですが、海外生活のための書類準備など実務的なこともありがたかった。若い時に欧州レースを体感できたことは、とても今の自分の糧になっています」と加える。「あとやはり大きかったのは心強さ。一人で海外活動をした結果心折れてしまった選手も何人か見てきましたが、本当に海外で、生活しながら厳しいレースを走り続けることは、本当にタフさが求められる。そこをチームが支えてくれるのは心強いことでした。僕は陸上競技から転向してきたので、ロードレースのしきたりを全く知らず、最初からガンガンアタックしていくスタイルだったんです。それは、温存して最後に勝負することが多い日本で言えば無駄足使いなんですが、向こうの積極的なレースを走って『これで良いんだ、こういうレースが走りたかった』って嬉しくなりました。「迷っているならどんどん海外に出た方がいい」。海外チャレンジに少しでも興味があるならこのアカデミーに参加するべきと強く訴える。「ワールドツアー選手の平均年齢もどんどん下がってきている最中だし、時間は限られていますから。橋川監督に「とにかく自転車レースを楽しめ」って言われたことが今も印象に残っているんです。本当に自転車ってトレーニングもレースもキツいものだけど、その反面楽しいこともいっぱいあるんですよね。そもそもほとんどの人が自転車が楽しくて競技を始めているんですから、どんどんチャレンジして楽しんでほしい。僕はそう思いますね」。2025年度のサイクリングアカデミーの募集は、5月2日(金、メールにて)まで。チームのメールアドレス に、申請書送付依頼メールを送付し、48時間以内に届く「申請書」に必要事項を記載して送信のこと。成長を目指すU17、U19世代の選手は、ぜひ一度検討してみてほしいプログラムだ。詳しくは以下の募集要項を確認頂きたい。2025年チームユーラシア‐iRC TIRE サイクリングアカデミー参加可能カテゴリーU17 (2009年1月1日〜2010年12月31日)U19 (2007年1月1日〜2008年12月31日)日程遠征の期間は7月18日〜8月28日までの期間を前期、中期、後期の3つのグループに分け、参加者の皆さんから参加期間の要望を伺い、2~4 週間の間でスケジュールを調整させていただきます。詳細の日程についてはチケットが確定するまで決められません。飛行機のトランジット等がありますので集団での行動(同一便)を基本とさせていただきます。参加レース参加するレースは未定ですが、2レース/週を予定しています。参加費(2週間の遠征に参加した場合の参考代金)35〜50万円(今後の為替レートにより変動します)以下のものを含みます。約2週間の生活費活動費(4レース)サイクリングジャージ(半袖ジャージのみ)航空運賃代金実費(15〜20万円前後)遠征の時期によりチケット代金が大幅に変わりますが、可能な限り効率的に低予算で実現できるよう努めます。参加人数前期グループU17とU19合計4〜6名中期グループU17とU19合計4〜6名後期グループU17とU19合計4〜6名申し込み期限5月2日(金) 申請書送付依頼期限5月12 日(月) 申請書紙送付期限(メールにて)サイクリングアカデミーへの参加は「申請書」によりお申し込みをいただいた後に、選考を行い誓約書へ記入及び送付していただいたのちに正式に決定されます。申請書の送付の段階ではまだ参加は決定していません。その他過去の活動等の詳細につきましては以下のリンクをご確認ください。https://teameurasia.hatenablog.com/archive/category/Cycling%20Academyアカデミー公式サイトhttps://team-eurasia-irc-tire-cycling-academy.jimdosite.com申請書送付依頼のメール送信先チームユーラシア‐iRC タイヤ 橋川 健 宛てUCI 国際自転車競技連盟公認レベル 1コーチ、チームユーラシア‐iRCタイヤ監督※申請書送付依頼の受付開始日:2025年4月14日Email : 電話 : 090-8310-3664<注意事項>「申請書送付依頼」のメールを受理した48時間以内に「申請書」を送付します。申請書が届かない場合は上記電話番号(090-8310-3664)にご連絡ください。必ず申請書送付依頼の受付開始日以降に送信して下さい。それ以前の送信は無効となります。主催株式会社オリエンタルスポーツチームユーラシア‐iRC タイヤ運営会社〒330-9501 埼玉県さいたま市大宮区桜木町2丁目3番地 大宮マルイ 7階電話 048-700-4723HP https://sunbrave.jp協賛井上ゴム工業株式会社https://ircbike.jp/サポート高木秀彰サポートプログラム提携ロード・トゥ・ラヴニール(RTA)https://www.rta-cycling.jp/