#20230425wec 週刊エコノミスト
世界金融危機
FRBの窮地 米国に迫り来る三重苦 インフレ、景気、金融システム
長谷川克之(東京女子大学特任教授)

米シリコンバレー銀行(SVB)破綻を同行固有の問題として片付けるのは危険だ。背景にある預金と債券の二つの危機を乗り切るには、議会の預金保護と中央銀行の金融緩和が必要になるが、容易ではない。

---

米国では連邦預金保険公社(FDIC)による預金保護の上限は25万ドル(約3300万円)であり、上限1000万円の日本と比べれば一見手厚いように見える。しかし、流動性預金が全額保護される日本とは異なり、法人の当座預金の上限も同じ25万ドルだ。

企業経営者や財務責任者にとっては安心な銀行への預金シフトは当然の責務だ。

#20230425wec 週刊エコノミスト
世界金融危機
FRBの窮地 米国に迫り来る三重苦 インフレ、景気、金融システム

---

SVBは集まり過ぎた預金を国債やモーゲージ債で運用した。短期の預金という負債を中長期の債券で運用するという期間のミスマッチは問題だった。しかし仕組債や証券化商品などの積極的なリスクテークは行っていなかったようだ。

SVBが保有する約1200億ドルの投資有価証券のうち、2割強は売却可能証券(AFS)、8割弱は満期保有証券(HTM)だった(#2022y 末)。HTMは償却原価での評価となり、時価評価を免れる一方、AFSは評価損益が「その他の包括利益」に計上される。

SVBは #2022y 年度にAFSの評価損の拡大から含み損益を加味した包括利益は赤字になっている。

#20230425wec 週刊エコノミスト
世界金融危機
FRBの窮地 米国に迫り来る三重苦 インフレ、景気、金融システム

---

米銀全体の債券含み損は、AFSとHTMを合わせれば6204億ドル(#202212m 期、FDIC調べ)。今回の危機は債権の価格上昇が金融システムを揺るがす「債券危機」でもある。

会計上は時価評価の対象外の貸出資産についても理論時価を試算した研究によれば、米銀の資産の含み損は2兆ドルに達するという。米銀の約11%で含み損がSVBより大きくなっており、預金保険対象外の預金の半分が流出した場合には186行が破綻する可能性がある。SVBなどの一部の破綻行の問題では済まない。

FRBは誤った。インフレ圧力を過小評価した昨年の利上げ開始の遅れが債券価格の急落を招き、銀行破綻の一因となった。

長期にわたるイージーマネーの時代の終焉に伴い、FRBですら見誤るほどのリスクの再評価と金融の歪みの調整が進行中だ。