> 「僕は海が好きである。 心の底から。 海と恋とは同じものであり、 海と愛とは同じものである。 海と自由とは同じものであり、 海と神とは同じものである。 海と詩とは同じものであり、 海と悲しみとは同じものであり、 海と苦しみともまた同じものである」
(『新版 狭い道~家族と仕事と愛すること』野草社)
> 「五分、十分、わずか五分、
十分の短い間でも月を眺める。
森の中で月を、
そして形を変えていく雲の姿を見ていれば、
その五分なり十分なりの短い時間の中に、
月と雲という慰めと喜びがあります。
それを与えてくれる月なり雲の姿というのが
カミなんだと思うんですよね」
> 「自分の生死を託すほど大事にする木
というものを見つけてしまうと、
生きるということがずいぶん豊かに、
楽になります。楽しくなります。
困った時にはその木に会いに行けばいいし、
遠すぎる時にはイメージすることも出来るんですよね」
屋久島で生を紡いだ詩人 ~山尾三省『アニミズムという希望』から|川口和正
緊急事態宣言の間に読み始めて、胸に刻まれた本がある。 一冊は、カミュ『ペスト』(新潮文庫)。 この時期に手にした人も多いだろう。 そして、もう一冊は、山尾三省『アニミズムという希望』(野草社)。 三省さんは、1970年代に東京から屋久島へ家族で移住し、農を営み、詩を紡ぎ、思索を続けた人である。 海を見に行くとき 三省さんの本は、それまでいくつか読んできた。 その文章は、素朴で、余分なものが付いてない。 生きるうえで大切なことは、火であり、水であり、人とのつながりなのだ…といった、実にシンプルなことなのだと教えてくれる。 たとえば、こんな一節。 「僕は海が好きである。心の底