猛毒の茨・前編|Deadly_Poison

 天を突くほどの峻険な山々に囲まれた、ぽつんと小さな盆地。そこは、地図にも載らぬ隠れ里だった。外界へと続く道らしい道はなく、険しい山道を踏破する者など、まずいない。故に、里は長きにわたり平穏を保ってきた。  里には、一人の美しい巫女がいた。名を、小夜(さよ)という。  彼女は言葉少なで控えめな娘だったが、ひとたび神楽を舞えば、その姿は見る者すべてを虜にした。しなやかな手足が宙を掻き、翻る緋色の袴は炎のように揺らめく。その舞は、神々への祈りそのものであり、人の心を慰める奇跡だった。  村人たちは親しみを込めて彼女を“舞姫”と呼び、神の使いのように崇めていた。  穏やかな日々。それが永遠に

note(ノート)