
[どうなる?2025年の柏崎刈羽原発]新潟県による被ばく線量シミュレーション、想定に「新たな安全神話」の懸念
東京電力福島第1原発であってはならない事故が起きた背景には、原発の安全神話があった。国や事業者にまん延した「原発事故は起こり得ない」という過信だ。その神話がよみがえりつつあるとの指摘が上がっている。政府が柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の再稼働を目指す中、現在進む原発事故時の被ばく線量シミュレーションや屋内退避の運用見直しでは、福島事故と同等かそれ以上の事故が起こった場合の視点を欠いているように映る。2025年、再稼働を巡る議論はどのような方向へ向かうのか。(新潟日報社原発問題取材班) 柏崎刈羽原発で重大事故が起きた場合、周辺住民はどの程度被ばくする可能性があるのか。新潟県は事故時の被ばく線量シミュレーションを実施し、今後公表するとしている。ただ、このシミュレーションでは、原発内で重大事故対策が機能した場合を前提に試算されることになっている。 「放射性物質が大量に出ない想定でやる意味はあるか」「(前提の設定が)非常に甘い」。2024年12月の県議会定例会では異論が相次ぎ、最大会派の自民党からも、より厳しい事態を想定するよう要望が上がった。 シミュレーションは、福島事故に関する新潟県独自の「三つの検証」でもポイントに上がった。避難対策の検証を担った避難委員会は、2022年9月にまとめた報告書で実施の必要性を指摘。委員からは、「原発内でこれだけ対応をしているから、これぐらいで済むだろうという前提にすると、(住民避難など)原子力防災対応に弱いところが出てくる」(山澤弘実・元名古屋大大学院教授)などと、原発内で事故対策がうまくいかない「悪い状況」の想定が必要だとの意見が出ていた。 しかし、新潟県はシミュレーションの前提に、福島第1原発事故やそれ以上の厳しい事態の想定を加えることを否定。花角英世知事は県議会での答弁で「過度な想定は不安をあおる」と、前提の見直しに同意しなかった。 こうした県の説明は、原子力規制委員会が「合理的」だとする事故の規模が念頭に
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