よくぞまぁ、書簡部分を映像化しないでいられたなぁ!私だったら絶対やってしまう(そんで蛇足ーってなる)えぇぇ⁈となるのがめちゃくちゃ面白いのだけれども、確かに映画がそこをカットしたのもわかる。私が映画のどこが好きかというと『フランケンシュタイン』かつ『マイフェアレディ』でありながら、ベラの自主性を保つことで『マイフェアレディ』にならなかったところだ。ベラはもうちょっと自分で自分の道を選んでいった人に思える。そこが爽やかで好きだった。
一方、原作はもしかしたら『マイフェアレディ』にもう少し近い…いや、何もわからない若い女に「教えてやる」みたいな流れでもないので『マイフェアレディ』とも決定的に違うんだけど。爽やかとは質の違う面白さ。(『フランケンシュタイン』や『マイフェアレディ』等、○○っぽいなぁと思ったものはだいたい作中でヴィクトリアが挙げている。それすらマッキャンドルスの底の浅さに見えて面白い)
#読書記録 #読書感想 #読了 #哀れなるものたち
マッキャンドルスの著作を編集した体で進むので、序文にしろ註釈にしろ、ここに書かれているのは本当のことですというのが殊更に強調される作風。で、そのマッキャンドルスの作品が、ヴィクトリアの書簡で突然全部ひっくり返る!確かに読んでる途中で、あれ?映画のイメージとちょっと違うな?といくつか思ったことがあって(バクスターが意外と若そうとか、ベラの"父親"で満足してなさそうな描写とか)マッキャンドルスの著述が終わった後の部分で、そういう違和感にいろいろとピタッと答えがハマってくる。ベラとは何だったのか、ベラの愛情はどこに向いていたのか、本当に哀れだったのは…。ヴィクトリアを消そうとしたのは…物語においてヴィクトリアを消したのは、マッキャンドルスに他ならない…うっわ怖!見える世界が全然変わってしまったじゃないかー!映画の爽やかさも好きだけれど、ふわふわのベラの成長譚がヴィクトリアのシャープさで切り捨てられる原作も、これはこれでとても面白かった。