【本を読む】#中立とはな何か
「ある本の翻訳をするとき、訳者は一つ一つの文章を日本語に置き換える作業をくり返し、その作業が終わると、全体の文章を整える。訳語の表記を統一し、文の流れを調整する。全体を通して検討すると、個々の文章を訳していたときには気づかなかったブレや不整合なところがみつかる。場合によっては、日本語の文章としてどうも意味が通らない箇所が出てくる。そういうときは原文と突き合わせて、その近辺をもう一度念入りにチェックし、意味が通じるように訳文を修正する…この工程をくり返してもとくに違和感を持たないところでミスをしていると、これをみつけるのはかなり大変である」(中立とは何か、91‐92)
文中の小見出し「尾高邦雄は『職業としての学問』でなぜごやくしたのか」(87)は著者自身によらないと思うものの、そこから数頁にわたって、誤訳というより無理解ないし誤解を検討している。
翻訳工程のまとめでは一度しか出てこない違和感に発しているように感ずる(それだけで誤訳の指摘の由来とするのは、そう感じない者にわかりづらい)。