Smartliv

@jun0000
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こんにちは!私は2児のパパで、現在は海外に住んでいます。子供たちと一緒に海外生活を楽しみながらレストランや観光地を探索するのが大好きです。よろしくお願いします!
「残るはずのないもの」が残るとき、人はそれをどう扱うのか。
短編『残響』は、音と記憶のズレをテーマにした静かな物語です。
大きな事件は起きませんが、読後にわずかな“引っかかり”が残るはずです。
https://note.com/slight_deviation/n/n6604c1a03ef3?sub_rt=share_pb
短編集「呼気」 第四話 残響|ささやかな誤読

第一章 【音声記録・書き起こし】 ファイル名:rec_[日付欠落]_001.wav 収録時間:43分17秒 書き起こし者:三上誠一(本人)  開始。  今日から、この部屋で起きていることを、できる限り記録することにした。記録する理由は、あとで説明する。今は、まず現状の確認から始める。  (咳払い)  時刻は、夜。正確な時刻はここに書かない。書く必要がないと判断した。理由もあとで説明する。  マイクの前に座っている。いつもの椅子。いつもの距離。マイクとの距離は口元から約三十センチ。これは自分で決めた標準距離で、五年以上この距離を使っている。  壁に機材が並んでいる。左から、

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漂白されたような白い壁と、半分に切られたグレープフルーツ。
冷蔵庫の音が止まり、静寂が層を成す時、日常はわずかに形を変える。
動詞を制限し、存在そのものを凝視した短編エッセイ。
https://note.com/slight_deviation/n/n6ed7d8a66f25?sub_rt=share_pb

​#現代的静寂リアリズム #短編小説 #創作 #エッセイ #リアリズム #読書

静止画エッセイ 屈折の臨界|ささやかな誤読

 午前十時のキッチンには、漂白されたような白さが横たわっている。南側の窓から差し込む直射日光が、白い壁に四角い空白を焼き付けているようだ。その中心に、半分に切られたグレープフルーツが置かれている。果肉の断面からは、鋭い酸の匂いが霧のように立ち上がり、そこにある。  ​切り口に並ぶ無数の粒は、湿った輝きを帯びて静止している。その一粒の先端には、いまにも零れ落ちそうな一滴が、重力に逆らうように留まっている。液体の膨らみは、窓からの光を内側に閉じ込め、微細な虹の断片を宿しているらしい。透明な球体の中で、光の屈折が複雑な模様を描き、そこにある。 ​ 先ほどまで聞こえていたはずの冷蔵庫の駆動

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短編小説「余白」を公開しました。
冬の団地で暮らす元教師の女性が、
電話に出ないこと、開けない箱、声にしない言葉の中で、
わずかに変わっていく物語です。
大きな出来事はありませんが、
「何かが動いた気がする」感覚を大切に書きました。
よければ読んでみてください。
https://note.com/slight_deviation/n/n3529fbe6af14?sub_rt=share_pb
第一話 余白|ささやかな誤読

第一章  冬の団地は、昼でも廊下が暗い。  桐島冴子は午前十時すぎに目を覚まし、しばらく天井を見ていた。天井のクロスに、薄い染みがある。去年の夏からあった染みで、形が変わったような気がするときと、まったく変わっていないと思うときがある。今日はどちらでもなかった。ただ、染みがあることを確認した。  起き上がる前に、スマートフォンを手に取った。通知が三件。ニュースアプリの見出しが二つと、スーパーのポイント失効案内。どれも触らなかった。画面を伏せて、布団の横に置いた。  台所でやかんに水を入れながら、窓の外を見た。向かいの棟の四階に、カーテンが半分だけ開いている部屋があった。朝はいつ

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スマートウォッチが描く青いグラフ。
私が「私」であることをやめていた時間の冷徹な要約。

自分の内側の感覚よりも、デバイスが示す数値を信じてしまう。

現代的な静寂と、書き換えられる自己についての短編エッセイ。

https://note.com/slight_deviation/n/nf093171a20b2?sub_rt=share_pb

#エッセイ #スマートウォッチ #創作

静止画エッセイ 鏡像としての青い帯|ささやかな誤読

 枕元に置いたスマートウォッチが、昨夜の私を「青い帯」として描き出している。画面を指でなぞれば、そこには私が意識を失っていた数時間の、ある種冷徹なまでの要約が表示される。  かつて、眠りは不可侵の聖域だった。目覚めたあとに残る微かな夢の残滓や、身体の重みだけが、夜の深度を測る唯一の物差しだったはずだ。しかし今、私の手首に巻き付いたセンサーは、私の脈拍と寝返りを微細な電気信号へと変換し、「深い睡眠」という名の一致した解釈を与えている。  グラフの深い青色は、私が私であることをやめていた時間を示している。思考が途絶え、記憶の整理が行われ、細胞が修復されるというその時間、私は確かにどこに

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「ひとりですが」と言うとき、その「が」の使い道に困る。

鍋が沸くのを待つ間、肉が白く変わるのを眺める。誰かといれば埋まったはずの思考の隙間が、湯気とともに立ちのぼる。

静かで、少しだけ恐ろしい夜の記録。

濁るまでの透明
https://note.com/slight_deviation/n/n9e556914500d?sub_rt=share_pb

#エッセイ #短編小説

静止画エッセイ 濁るまでの透明|ささやかな誤読

 「ひとりですが」と言うとき、私はいつも、その「が」の使い道に困る。何かの言い訳のような、あるいは先手を打つような、その小さな接続詞を舌の上に転がしながら、案内されるまま席に着く。仕切りのある、ちょうど棺桶ほどの広さの空間に。  鍋が沸くまで、することがない。隣のテーブルからは誰かの笑い声が聞こえてくる。二人か、三人か。話の内容はわからないけれど、声の重なり方でそれが楽しい種類の話だとわかる。私は炭酸水を一口飲んで、メニューを伏せた。  薄切りの肉を一枚、鍋に沈める。湯の中でそれはすぐに縮んで、赤みが消えていく。あの変化を見ていると、いつも何かを思い出しそうになる。思い出せないまま

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行き先を決めずにバスに乗った女の話を書いた。

事件はない。説明もない。ただ、窓の外を見続ける午後が、少しずつ自分の輪郭を失っていく。

二人称。全4章。短編小説「曇天」、NOTEにて。

https://note.com/slight_deviation/n/n2bc306ea96ef?sub_rt=share_pb

#短編小説 #心理小説 #停滞

短編小説 曇天|ささやかな誤読

記憶の断片  バスに乗っている。行き先は、決めていなかった。  窓の外を見るたびに、景色は続いている。電柱、看板、川、山の稜線。何かが通り過ぎるたびに、色だけが記憶から抜け落ちていく。  隣に、女が座った。茶封筒を持っていた。どこで降りたのか、降りる瞬間を、あなたは見ていなかった。  時刻は確認できる。体感とは、一致しない。  振動が、一度だけあった。  この物語に事件はない。起きたことと、起きなかったことの境界が、少しずつ溶けていくだけだ。あなたは最後まで、バスに乗っている。 第一章  バスは動いている。それだけは確かだ。  窓の外を、電柱が等間隔に過ぎていく。あな

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都市の隙間に配置された「一時的な権利」を、アプリ経由で奪い合う。

シェアサイクルに跨る時、私は風景の一部ではなく、データ上の移動体に過ぎないと感じる。座標を借り、返却するだけの日常に潜む、微細なズレ。

静止画エッセイ「座標の借り物」
https://note.com/slight_deviation/n/n2b47b3768b31?sub_rt=share_pb
#エッセイ

静止画エッセイ 座標の借り物|ささやかな誤読

 ビル風が通り抜ける路地裏の隅に、赤い自転車が五台、アスファルトの割れ目に沿って整列している。サドルの表面には、昨夜の湿気が薄い膜のように残っていて、指を置くと吸い付くような冷たさが伝わる。スマートフォンの画面を叩く。寒さで硬直した指先が、パスコードを一度打ち間違える。画面上の地図では、青い点がビルの影を右往左往し、測位の精度が追いつかない。数秒のラグ。ようやく現在地が確定し、座標が重なる。  この数平方メートルは、都市の機能が吐き出した空白だ。アプリ上で予約ボタンを押した瞬間、私はこの鉄塊を一時的に占有する権利を、目に見えない誰かから奪い取ったことになる。隣の自転車のグリップには、

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短編小説「透明」――オフィスの昼休みを舞台に、一人の女性が五日間を記録する。挨拶はなく、名前も呼ばれない。それでも、指先に何かが磁る。

読んだ後に残るのは、答えではない。

短編小説「透明」
https://note.com/slight_deviation/n/n2060b3313133?sub_rt=share_pb

#短編小説 #創作文学 #日本語小説 #詩的小説

短編小説 透明|ささやかな誤読

記憶の断片  時計が二分、ずれている。どちらが正しいかは、最後まで分からない。  オフィスの九階で、ある派遣社員が昼休みを過ごす。月曜から金曜まで、五日間。彼女は観察する。人の流れ、足音の方向、付箋の位置、グループチャットの既読数。記録する。給湯室の言葉が誰に向けられたか。食堂で口が一瞬開いた理由。廊下ですれ違うたびに、見えたのか見えていなかったのか。  何かが起きているのか。あるいは何も起きていないのか。  この物語は答えを持っていない。持っていないことを、最初から知っている。  閾を跨ぐ前に、一つだけ確認しておくといい。あ

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冬の朝、スマートウォッチの「睡眠スコア」が、私の体調を決定づける。
​身体の重たさよりも、サーバーが算出した「88点」という数値を信じてしまう。私の肉体は、ただ数値を生成するための不確かな容れ物に変質しているのかもしれない。
​静止画エッセイ「青い波形の所在」
https://note.com/slight_deviation/n/nbe3eeb172325?sub_rt=share_pb
静止画エッセイ 青い波形の所在|ささやかな誤読

 冬の朝、カーテンの隙間から差し込む光はまだ薄い鉛色をしている。左手首には、一晩中体温を吸って生温くなったシリコンのバンドが、わずかな圧迫感を伴って食い込んでいる。皮膚の湿度と混じり合って密着したその感触は、眠りの名残というよりは、拘束の余韻に近い。枕元でスマートフォンの画面を点けると、網膜を刺すような青い光が、寝室の家具の角を唐突に削り出した。  画面には、深い藍色と淡い水色の棒グラフが交互に並んでいる。昨夜の睡眠スコアは「88」。深い睡眠の時間は、一昨日よりも十二分長い。指先で冷たいガラスの表面をなぞると、遠くのサーバーが算出した「良好な休息」という文字が、暗い部屋の中で唯一の確

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短編小説『焦土』を公開しました。

形式はチャットログ。
構造は結末から過去への遡行。
ジャンルは、恋愛に見えてホラー。

この物語には怒声も涙も謝罪も登場しません。
あるのは既読と、38℃に設定されたままの給湯器だけです。

静かな話です。
静かすぎて、読後しばらく言葉が出ないかもしれません。

#短編小説 #静的ホラー #既読スルー

https://note.com/slight_deviation/n/need7d1323d59?sub_rt=share_pb

短編小説 焦土|ささやかな誤読

記憶の断片  同じ家に、二人がいる。  毎日、言葉が届く。毎日、既読がつく。  ただそれだけのことが、ここでは起きている。 第四章 灰 2024年11月30日(土) [既読] 23:47 おやすみ (返信なし) [既読] 23:48 明日、何食べたい? (返信なし) [既読] 23:49 ねえ (返信なし) [既読] 00:02 ごめん、寝てた? (返信なし) [既読] 00:03 起きてるよね、リビングの電気ついてる (返信なし) [既読] 00:04 ... (返信なし) [既読] 00:11 おやすみなさい (返信なし) [既読] 07:1

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