https://www.wacoca.com/media/285680/ 音楽を楽しめなくても、“グルーヴ感”には抗えない:研究結果 | WIRED.jp #music #研究結果/Research #科学/Science #音/Sound #音楽 #音楽/Music
音楽を楽しめなくても、“グルーヴ感”には抗えない:研究結果 | WIRED.jp

音楽に合わせて衝動的に体を動かしたくなる感覚は、音楽用語で「グルーヴ感」と表現される。これまでグルーヴ感がもつ「快感」と「体を動かしたくなる衝動」という2つの要素には密接な関連性があると考えられていたが、実は完全に独立した生理反応である可能性が高いことが、このほど最新の研究で明らかになった。カナダのコンコルディア大学の研究チームによると、後天的な脳の障害などにより音楽から快感を得られない音楽無感症の人でも、リズムに合わせて動きたくなる衝動は生じている。こうした人々は音楽自体からは快楽を感じにくいものの、音楽に合わせて体を動かしたいと感じることで結果的に“快感”を得ているのだという。体が動く衝動と快感は別物研究チームは今回、148人の被験者を対象に大規模なオンライン調査を実施した。音楽から得られる快感の程度を評価する「バルセロナ式音楽報酬質問紙(BMRQ)」を用いて、被験者がもつ音楽に対する報酬感覚を複数の側面から測定したところ、このうち17人が音楽無感症の条件に該当した。なお、これらの被験者がリズムやテンポといった音楽の構成要素を正常に知覚できることは、事前に実施した「モントリオール式失音楽症評価テスト(MBEA)」によって確認されている。さらに研究者たちは、リズムと和声の複雑さがそれぞれ異なる51種類の短い楽曲を被験者に聴かせ、「どれくらい快感を得られたか」や「どれくらい体を動かしたくなったか」を5段階で評価してもらった。その結果、音楽無感症に該当した17人と他の被験者の評価には、快感の程度と体を動かしたくなる程度の両方において大きな違いは見られなかった。これは研究チームの当初の予想に反する結果だったという。この研究を主導した博士課程研究員のアイザック・ロムキーによると、一般的に音楽のリズムの複雑さはグルーヴ感に対して逆U字効果があるとされる。つまり、リズムが単純すぎても複雑すぎても、人は快感を得たり体を動かしたくなったりしないことを意味する。そこそこ複雑な楽曲が最もグルーヴ感を生み出すということだ。音楽無感症に該当する被験者は音楽から快感を得ることが難しいことから、この逆U字型のカーブはより平坦になるだろうと、研究チームは予想していた。しかし、実際には音楽無感症のグループも、そうでない他の被験者たちと同様に特定の楽曲から“快感”を得ており、同じように体を動かしたいと感じていることがわかった。このため音楽無感症の人々は音楽そのものから快感を得ているのではなく、体を動かしたくなる衝動を通じて心地よく感じている可能性が高いと、ロムキーは説明する。現在のところ、音楽無感症のメカニズムは十分に解明されていないが、遺伝的な要因が関係している可能性を研究者たちは指摘している。ロムキーによると、体を動かしたくなる衝動は、脳内で運動機能をつかさどる背側線条体に関連している。一方で快楽の感覚は、報酬や動機づけを制御する腹側線条体によって処理されているのだという。今回の研究結果は、音楽を心地よいと感じるかどうかはグルーヴ感とはほとんど無関係であり、リズムに合わせて体を動かしたくなる衝動は脳内に生じる生理的な反応である可能性を示唆している。研究チームは今後、磁気共鳴画像(MRI)検査や脳磁図(MEG)などの画像診断技術を用いて、音楽無感症患者の線条体の機能や構造に違いがあるかどうかを調査する予定だとしている。

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