#ShukaHakaFavTanka
たったいま各馬一斉スタートし地球の自転速度を上げる /田中翠香

午年につき。寒い日などに外を歩くとき、地球をふんふんと一歩ずつ足で後ろに送り出す気持ちになって自分を鼓舞していますが、たぶんこの歌を読んだからだと思います。言葉の隙がまったくなくて見事です。
歌集『パーフェクトワールド』より。(初出は #うたの日 だと思います。)
#短歌 #tanka

#ShukaHakaFavTanka
大寒
ひとたびは丸めし肩を広やかに開き大寒の朝を子は発つ /美智子
(丸めし=まろめし、発つ=たつ)

かがんだ子が靴を履き終えて出発する様子を、子の後ろから見送るところと読みました。寒さをもろともせずさっと進んでいく子の先の、朝のよく澄んだ空まで見えるようです。
歌集『ゆふすげ』より。
#短歌 #tanka

#ShukaHakaFavTanka
屋上へ干しにゆかむと掛け布団敷き布団あたまに載せてはこびき /山下翔

階段が狭いのでしょうか。そうでなくても二枚の布団を一度に運ぶなら、そのほうが楽かもしれません。直前の歌には子どもが数人いた家が描かれ、皆でわいわい言いながら運んだのかなと想像しました。
歌集『meal』より。
#短歌 #tanka

#ShukaHakaFavTanka
戦時下もコンビニは開いているだろう氷のすきまに珈琲そそぐ /吉川宏志

銃後、という言葉を、また、戦争の当事国の市民の、意外と傷ついていない生活のテレビ中継を思い出します。強固な氷もいつか珈琲にとけて混ざりますが、氷がそれを知らずにいるのはつかの間のこと。
歌集『叡電のほとり』より。
#短歌 #tanka

#ShukaHakaFavTanka
手がとどくあんなにこわい星にさえ 右目が見たいものは左目 /我妻俊樹

今や宇宙のかなたの星のことも知る我々の、それでも見えないものに気づかされました。鏡で見ても左目そのものを見ていることにはなりませんし、くり抜いて見たとしても、左目の機能はなさそうです。

歌集『カメラは光ることをやめて触った』より。
#短歌 #tanka

#ShukaHakaFavTanka
死と生に断絶おかぬ芒らが水のごとくに月光を享く /伊藤一彦

植物の生死は人間を含めた動物のそれとずいぶん違って、水のようになめらかに連続しているということを思いました。照らす月光はすべてに通底する物理の象徴ととります。生死を分けたがるのは人間の性でしょうか。
歌集『土と人と星』より。
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#ShukaHakaFavTanka
記憶のない力士にあなたは力士だと伝える これでいいのだろうか /岩倉曰

力士であるという記憶もなくなった、と読みました。伝えても、力士としての勘や能力が戻らないと、その後の人生が心配です。でも、これに近いアドバイスは意外と世にあふれている気もします。
歌集『ハンチング帽のエビ』より。
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あきらめが未練外連にうちかって中年男になりにけるかも /小高賢
(ルビ:外連=けれん)

未練がましく思うのにも、外連=ごまかしをするのにも疲れてしまうと、中年男の完成というわけです。先人がこのように素朴に詠まれていると、安心もし、さらにあきらめもしてしまいます。
歌集『耳の伝説』より。
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青き葉を卓に並べるさびしきかな子はあきないを知りはじめたり /小高賢

子どもがお店屋さんごっこをやり出したことを、微笑ましいなどとせず、さびしきかな、と六音使ってはっきり述べています。無垢な子に世を渡る術を身につけさせないといけない、もどかしさに共感しました。
歌集『耳の伝説』より。
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一言で言えないことを一言で言わせてしまう発車時刻は /蝦名泰洋

連作「モスクワの羊飼い1980」中の、小見出し「出征」中の一首。その一言ではとうてい足りないものが、うまく凝縮されて伝わっていることを祈りたくなります。音的にも、字面的にもリズミカルです。
歌集『ニューヨークの唇』より。
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