佐々木朗希、メジャー初登板は3回1安打3奪三振5四球1失点【MLB】ドジャース 6ー3 カブス(19日・東京ドーム) ほろ苦いメジャー初登板でも怪物の片りんは示した。ドジャースの佐々木朗希投手は19日、東京ドームで行われたカブス戦に先発。3回56球を投げ1安打3奪三振も5四球を与えて1失点だった。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「片りんは十分に見せた」と一定の評価。「米国に戻って、次の登板が真価を問われる」と次回登板に期待を寄せた。 初回は160キロを超える直球を連発。力で3者凡退にねじ伏せる上々の立ち上がりだった。「MLBのデビュー戦、しかも東京での開幕シリーズ。マイナー契約でスタートして開幕直前にメジャー契約でしょ。そんなシチュエーションで力むなという方が無理。誰でも力が入りますよ。初回は力みまくっていた。100マイル(約161キロ)を連発して3者凡退。ただベンチに帰ってホッとしたのか、2回以降はバランスが崩れたように見えました」。 野口氏が「あんなに四球を連発するような投手じゃない」というように佐々木は過去3年間、奪三振率11.87をマークする一方で与四球率は1.96。制球を崩すことが少ないタイプだが、この試合は打者14人に対し、初球ストライクは3人だけ。56球中、半分以上の32球がボールで、ストライク率は約43%。3回は押し出しを含む3連続四球で失点した。常にボールが先行する内容ではリズムに乗れない。球数もかさんで3回での降板となった。 それでも「あれだけの球を持っているのを全世界に思い知らせることはできた。怪物が海を渡って、注目される中で、その片りんは初回の1イニングで十分に見せたと思う」とデビュー戦としては及第点の評価。「次の米国での2試合目で真価を問われるでしょう。もう、ここまで力むことはない。平常心で臨めるはず。(試合の)入り方をうまくやって、すんなり切り抜けられれば問題なくいけるんじゃないか」と次戦での本領発揮に期待する。カブスに許した2つの盗塁に懸念「崩しにきていた」 2回に取られたピッチクロック違反については「仕方ないでしょう。今まで経験がないんだし、これはやりながら慣れていくしかない」。一方で完全にモーションを盗まれて楽々と許した2つの盗塁については懸念を示した。「日本でやっている時から、他球団は足を使って崩しにきていた。今回、カブスもそういう情報を持っていたはず。米国では他の球団にも伝わっていて、佐々木との対戦の鍵は『足だな』となっていると思います」。 メジャーでは牽制の数が1打席につき2度までの制限もある。「2球はできると考えて、どこで投げるかを考える必要もある。チーム、バッテリーで工夫するしかない。後はスライドステップの部分、クイックですね」と課題を指摘。その上で「米国では走られまくっても、ホームに還さなければいいというスタイルの投手もいっぱいいる。走らせないようにするか、最終的に得点されないようにするか、考えることも必要かもしれません」とも話した。 見せつけた実力と浮かび上がった課題。それだけ可能性は無限で、楽しみが広がる。日本が誇る怪物の挑戦は、まだ始まったばかりである。(尾辻剛 / Go Otsuji)
カブス・鈴木、東京シリーズは2試合とも無安打【MLB】ドジャース 6ー3 カブス(19日・東京ドーム) ほろ苦い“凱旋”となった。カブスの鈴木誠也外野手は19日、東京ドームで行われたドジャース戦に「2番・DH」で先発出場。1四球を選んだものの4打数無安打3三振に終わった。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「去年までの誠也の姿じゃなかった」と東京シリーズの独特のムードが与えた影響を指摘した。 佐々木朗希投手との日本人対決となった初回1死は、フルカウントから159キロ内角直球で空振り三振。佐々木と2度目の対決となった3回は四球を選んだ。ルイス・ガルシア投手に代わった4回2死満塁の絶好機では中途半端なスイングで空振り三振。6回は三ゴロ、9回も空振り三振に倒れた。 18日の同カードでは9回に痛烈な当たりを放ったもののサードライナー。2試合連続で4打数無安打となり、野口氏は「力み倒していた。日本での試合だし、早く1本打ちたいというのがありありと出ていた。頭の中で考えがまとまらないまま打っていた感じ。狙い球が合っていなかった」と解説した。 この試合ではドジャースの大谷翔平投手が本塁打、佐々木朗希投手は3回1失点で降板も160キロ超の直球を連発するなど見せ場を作った。18日の試合では山本由伸投手が5回1失点で勝利投手、投げ合った今永昇太投手は4回無安打無失点。今シリーズに登場した日本人5選手で鈴木は“蚊帳の外”となった感があるが、野口氏は「仕方ない部分がある」という。「日本でやるMLBの開幕戦。どうしても日本人に期待が集まってしまうし、力むなって方が無理でしょう」。同学年の大谷は活躍。しかも鈴木は東京出身だ。強い責任感が力みとなったのは想像に難くない。ドジャースはトミー・エドマン外野手とテオスカー・ヘルナンデス外野手にも一発が飛び出し、両軍とも守備でも素晴らしいプレーを連発。「いっぱい凄いプレーがあったけど、今回はどうしても日本人選手を中心に見てしまう」と注目度が重圧になった可能性も指摘した。「今回はこの状況で結果を出した大谷、由伸、今永が凄すぎただけ」と野口氏。まだシーズンは始まったばかり。鈴木がこのまま終わるわけがない。切り替えて、すぐに本来の姿を取り戻すことだろう。(尾辻剛 / Go Otsuji)
巨人・オコエ、ドジャース戦で途中出場して中前打 プロ10年目にいよいよ覚醒か。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、15日のドジャース戦で安打を放った巨人・オコエ瑠偉外野手の打撃を分析した。 6回に代走で途中出場。8回1死、この試合初めての打席を迎えたオコエは、タナー・スコット投手と対峙した。“大谷翔平キラー”として知られ、パドレスから今季ドジャースに加入した左腕である。初球は内角157キロ直球をファウル、2球目は外角直球を見逃して追い込まれた。迎えた3球目は内寄りの直球。これを中前にライナーではじき返した。「あっ、と思いましたね。今までのオコエなら引っ張りにいっている球。それで引っかけて凡打になっていたのをセンターに打ち返しましたから。もしかしたら変わってきているのかもしれません」 2015年ドラフト1位で楽天に入団も思うような成績を残せず、2022年12月の現役ドラフトで巨人に移籍。今季は勝負の巨人3年目となる。オープン戦は打率.471、OPS1.088と猛アピール。昨年世界一のドジャース戦は打線が5安打と沈黙する中、途中出場組では唯一の安打だった。 ブルペンデーでブレイク・トライネン投手ら、そうそうたるメンバーが登板。「メジャーを代表する投手ばかりですから。1イニングごとに代わると、余計に打てない。あんな投手たちは日本にはいないですから。選手たちはいい経験になったと切り替えて、対日本人投手に向かうしかない」。そう野口氏が指摘したように攻略が難しい中で出た1本は、今後に向けて明るい材料になる。 オコエについて「身体能力は高い選手。成長してレギュラーとして活躍できるかどうか」と注目する野口氏。節目のプロ10年目で“未完の大器”が花開くか、期待は高まる。(尾辻剛 / Go Otsuji)
揃ってブルペン入り「プロで経験を積んだ投手の中に入っても見劣りしない」 今年のドラフト1、2位は使えるーー昨年レギュラーシーズン3位からポストシーズンを勝ち上がり、26年ぶりに日本一となったDeNA。今季は27年ぶりのリーグ優勝に照準を合わせているが、ドラフト1位の竹田祐投手(三菱重工West)と2位の篠木健太郎投手(法大)が揃って大きな力になりそうだ。現役時代に日本ハム、横浜(現DeNA)など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、沖縄・宜野湾キャンプをチェックした。【画像】DeNA外野手のモデル美人妻 大胆ビキニショットにファン悶絶「素晴らしい」 竹田と篠木の両右腕は13日にブルペン入りし、伊勢大夢投手、現役ドラフトで阪神から移籍した浜地真澄投手、2年目の松本凌人投手らと並んでピッチングを披露した。野口氏は「ドラフト1、2位の2人は、プロで経験を積んだ投手の中にいても見劣りせず、むしろ目立っていたくらいです」と感嘆する。 2人はタイプが違う。竹田は「ゆったりしたフォームから、切れのいい球がひゅんと来る感じ。打者から見て打ちにくさを感じる投手です」と野口氏。「きょうは本人としてはあまり調子が良くなさそうな様子でしたが、右も左もわからない新人にとって疲れがピークに達する時期ですから、しかたがありません。環境に慣れ、疲れが抜けてくれば、球威はもっと上がると思います。下半身が大きくて馬力がありそう。先発タイプでしょう」と評した。 一方、篠木は法大時代から、大きく振りかぶって最速157キロの剛速球を投げ込む本格派として知られていた。野口氏は「きょうも体全体を使った躍動感のあるフォームから、凄い球を投げていました」と絶賛した。「実は、篠木に関して注目ポイントが1つありました」と野口氏。「今どき珍しいワインドアップから、全身を使って跳ねるように投げる篠木ですが、セットポジションではどうなのか、という点です」と明かす。「1位で消えると見ていた篠木をよく2位で獲れたなと」 その結果は想像を超えていた。「途中からクイックで投げ始めたのですが、そこそこ上手です。そしてクイックで投げても球速が落ちないところは、大したものだと思いました。プロでもワインドアップでは155キロの速球を投げられるのに、クイックとなると5キロ以上球速が落ちてしまう投手が結構いますから」と感心しきり。「法大時代に元プロの大島公一監督、高村祐助監督の指導を受けただけあって、しっかり仕込まれていると感じました」と付け加えた。「この篠木をよく2位で獲れたな、と思います。僕は1位で消える選手と見ていましたから」とも。「大学3年の秋に右肩の違和感を訴え、それで評価を下げた球団もあったと聞きましたが、DeNAは僕と同い年の河野亮アマスカウトが担当で、『大丈夫』という情報を得ていたそうです。実際、きょうのブルペンで肩の不安は全く感じられませんでした」と語った。「DeNAは以前からルーキーであっても、良ければ遠慮なく、どんどん使ってきたチームです、竹田と篠木が先発ローテに入ってくる可能性も十分あると思いますよ」と野口氏は分析する。確かに、2015年ドラフト1位の今永昇太投手(現カブス)、2016年1位の浜口遥大投手(現ソフトバンク)、2017年1位の東克樹投手はいずれも、1年目から先発ローテの一角として活躍した。今年も新人2人のフレッシュな活躍を、1軍のマウンドで見られるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
3年目・門別、昨年も岡田前監督から期待されるも5試合0勝2敗 新生藤川タイガースを象徴する若手成長株がいる。弱冠20歳の高卒3年目左腕・門別啓人投手だ。藤川球児監督就任後初の対外試合として今月16日に沖縄・バイトするならエントリー宜野座スタジアムで行われた、楽天との練習試合に先発。2回を無安打2奪三振無失点に封じた。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、チャンスを生かしきれなかった昨年の門別との大きな違いを指摘する。 門別は楽天との練習試合で、初回1死から味方の三塁手のファンブルで出塁を許し、3番の辰己涼介外野手も四球で歩かせたが、後続を断ち、2回は3者凡退に抑えた。ネット裏で視察した野口氏は「立ち上がりは少しバタバタしました。エラーと記録された打球も痛烈な当たりでしたし、その後辰己に四球を与えたことも反省材料です」と評しつつ、「しかし、昨年に比べると明らかによくなりました」と断言する。 門別は昨年もこの時期の練習試合で好投し、岡田彰布前監督から大きな期待をかけられた。開幕1軍入りを果たし、リリーフで3試合経験を積んだ後、5月3日の巨人戦(東京ドーム)で先発のチャンスを得た。しかし結果は3回6失点(4自責点)KO。その後は故障にも見舞われ、唯一の1軍登板となった8月24日の広島戦(マツダ)の先発も、5回2失点で黒星。結局5試合0勝2敗、防御率4.50がプロ2年目の昨年の成績だった。「もともと球威が魅力の投手ですが、昨年に比べてボールの強さ、コントロールともに向上しています」と野口氏。「要因は、もの凄いクロスステップで投げていたのが修正されたことだと思います。直そうとして直したのか、自然に直ったのかはわかりませんが、ほぼ真っすぐか、ちょっとクロスステップ程度に収まっています。そのお陰で体を縦に使えるようになり、腕も縦振りになって、ボールを上から叩けるようになりました」と指摘する。フィリーズとマイナー契約の青柳が抜けた分を「みんなが狙っている」 投球フォームを“横振り”から“縦振り”に修正するのは、復活を期す巨人・田中将大投手も取り組んでいるテーマだ。野口氏は「投手はいろいろな理由で横振りのフォームになってしまうことがあるのですが、サイドスローでない限り、やはりオーバースローの投手は体を縦に使わないと、うまくいかないと思います」と解説する。 1軍の壁に跳ね返された昨年を経て成長を遂げた門別。だからといって、先発ローテ入りが即確定するほど阪神の投手陣は甘くない。昨年13勝3敗の才木浩人投手をはじめ、村上頌樹投手、大竹耕太郎投手、ジェレミー・ビーズリー投手、西勇輝投手、伊藤将司投手ら実績のある顔ぶれが並び、新外国人ジョン・デュプランティエ投手、ドラフト1位ルーキー・伊原陵人投手らもローテ入りを狙う。2軍キャンプで調整中の高橋遥人投手もいずれ戻ってくるはずだ。 野口氏は「ちょっとハードルは高いですが、それでもフィリーズとマイナー契約を結んだ青柳(晃洋投手)の分が空いたので、みんながそこを狙っている。門別はチャンスさえもらえたら、昨年より結果を出せそうです」と期待を寄せる。一方で「気がついたらクロスステップに戻っていた、などということがないように、試合の中で固めていくことが大切だと思います。癖を直しても、それを定着させるのは結構難しい作業ですよ」と釘を刺した。実績十分な阪神投手陣にフレッシュな新風を吹き込むか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
野球評論家・野口寿浩氏、広島の中村奨成は「打たなければ生き残れない」 鳴り物入りでプロの門を叩いた未完の大器も、いよいよ崖っぷちか。広島・広陵高3年時に夏の甲子園で大会記録を更新する6本塁打を放ち、2017年ドラフト1位で地元球団の広島に入団した中村奨成外野手。今年でプロ8年目を迎え、6月には26歳となるが1軍定着にはほど遠く、いまだ通算2本塁打、11打点に過ぎないのが現実だ。覚醒のためのポイントは何か。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が指摘する。【PR】盗塁王・近本光司を足元からサポート 中高生に勧めたい新スパイク「NEOCONNECT」 中村奨は昨年、ウエスタン・リーグではチーム最多の8本塁打を放ち、打率.278をマークした。しかし、1軍に上がると結果が出ない。昨年も30試合に出場したが69打数10安打の打率.145、0本塁打、1打点という寂しい数字に終わった。 広島は11日に宮崎・日南での1次キャンプを打ち上げ、13日から沖縄で2次キャンプを行う。野口氏は10日に日南で行われた紅白戦を視察していた。中村奨はこの試合に、紅組の「3番・DH」で出場した。 初回、紅組の攻撃。1番の羽月隆太郎内野手が四球で出塁するも、2番の大盛穂外野手はあえなく遊ゴロ併殺に倒れる。続く中村奨は初球を打ち上げ、左飛に終わった。野口氏は「厳しいようですが『1軍に定着できない理由は、そういうところだぞ』と言いたくなります」と苦言を呈した。「プレーボールとともに、せっかく四球で走者を出したのに、次打者がゲッツー。試合の流れにとって、こういう時に3番打者が出塁できるかどうかは非常に重要です。そこで中村奨は、初球を簡単に打ち上げてしまった。本来なら、確実に打てる球を見逃したとしても、首脳陣は『四球でも何でも出塁しようとしている』と選手の意図を感じ、納得するところです。打つなら確実にとらえなければならない。外野手が前進して捕球するようなフライを打ち上げてしまっては、チームのムードが確実に悪くなります」どこでも守れる二俣、侍ジャパンに抜擢された田村ら若手が次々台頭 中村奨が考えなくてはならないのは、目の前の試合の流れだけではない。野口氏は「中村奨は、打たなければ生き残れない立場です。そういう中で、どう結果を出すか。というよりも、まずチームが自分に何を求めているかを理解することが先決です。ホームランを打ってほしいのか、出塁してほしいのか、走者を返してほしいのか……。もちろんシチュエーションによっても変わりますが、まず自分がどういうタイプの選手と見られていてるのかを把握し、そこへ向かって練習しなければいけません」と指摘する。 さらには「わからなかったら、首脳陣に聞けばいいのです。中村奨は技術に関しては、物凄く突き詰めて練習していると思います。しかし、そもそも技術のない選手は1軍に呼ばれないわけで、どこで差ができるのかというと、考えてやっているかどうかです。漠然とバットを振っているだけでは、1軍で活躍することはできません」と強調するのだった。 チームでは、中村奨より年下の選手も台頭しつつある。前出の紅白戦では、白組の「3番・遊撃」で出場した22歳の二俣翔一内野手が、7回に左翼ポール際へ2ランを放った。野口氏は「僕が“激推し”しているのが、この二俣です。足が速くて、肩が強くて、打撃は超積極的で2年前にウエスタン・リーグの最多安打を記録しました。捕手としてプロ入りしましたが、今は内外野どこでも守れます」と称賛する。 また、白組の久保修外野手は、中堅守備で何度も目を見張らせた。「新井貴浩監督が『外野守備はウチで1番上手い。これで打てるようになれば、即レギュラーです』と言い切る素材です」と野口氏。田村俊介外野手は、昨年3月の「日本vs欧州代表」で侍ジャパンのトップチームに抜擢された逸材だ。一方、ドラフト1位ルーキーの佐々木泰内野手は、昨秋に左肩を脱臼した影響を考慮され、キャンプは2軍スタートとなった。野口氏は「首脳陣は無理をさせない方針ですが、長打力は魅力です」と評価している。 今年の広島は、菊池涼介内野手、田中広輔内野手、秋山翔吾外野手らベテラン陣を、若手が激しく突き上げる構図。それがチーム力アップにつながる。中村奨も乗り遅れてはいられない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
オリ山下がライブBPに臨むも…右手中指の爪が割れるアクシデント 一瞬、ヒヤリとした空気が漂った。オリックス・山下舜平大投手は宮崎キャンプの11日、今年初の実戦形式となるライブBPに登板したが、右手中指の爪が割れるアクシデントに見舞われ、打者6人に計30球を投げるはずだった予定を打者2人、10球で切り上げた。「国内で断トツの素材」ともいわれる22歳の大器は、今年どんなシーズンを過ごすのか。【PR】盗塁王・近本光司を足元からサポート 中高生に勧めたい新スパイク「NEOCONNECT」 指を気にする仕草を見せた山下のもとへ、コーチとトレーナーが駆け寄る。山下自身は「投げられます!」と“続投”を主張したが、コーチが大事を取った。山下は報道陣に「中指の爪が割れましたが、僕は爪が割れても、マメが潰れても投げられるので大丈夫です」と説明し、「こんなに早く実戦形式で投げられるとは思っていなかった。順調です。ボールが指にかかる感じがありました」と、むしろ表情は明るかった。 このライブBPを、現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が視察した。「投手がこの時期に爪を割ったり、マメを潰したりするのはよくあることです。逆に言えば、ボールがよく指にかかっている証拠で、いいんじゃないですか。痛みを伴っているのなら話は別ですが、本人が『投げる』と言ったくらいですから、大丈夫でしょう」との見立て。「実際、杉本(裕太郎外野手)のバットをへし折るシーンがありましたし、ボールの走り、指のかかりは良かったと思います。昨年のような不振は、もうないでしょう」と評した。 山下は高卒3年目の2023年に9勝3敗、防御率1.61の好成績を挙げ、新人王に輝いた。一方で、8月に腰の張りを訴え、9月には「第3腰椎分離症」で戦線を離脱した。4年目の昨年は14登板で3勝6敗、防御率3.38の不振。10月には第3腰椎分離症が再発し、リハビリを進めていた。大谷翔平を彷彿とさせる190センチ、100キロの体格 なぜ昨年は、思うような成績を残せなかったのか。野口氏は「昨年は、腕の振りが横振りになっていました。本来は縦に割れ、曲がりも大きかったはずのカーブが、スライダーのように横へ曲がっていたのも、横振りが理由だったと思います。今年はライブBPを見た限りでは、縦振りに戻り、しっかり上から叩けていたように見えました」と分析する。 さらに「周辺から『山下は去年、ウエートで胸や肩のあたりに筋肉をつけ過ぎたことが不振の原因だった』と指摘する声を聞きました。確かに僕が1年前の今頃見た時には、ウエートをガンガンやったそうで、凄い筋肉をしていました。今年はそれほどではありません」と付け加える。「本当に不振の要因だったのかどうかはわかりませんが、筋肉が邪魔で腕が上がらなくなり、その結果、横振りになっていたということであれば、納得がいく話です」とうなずいた。 ドジャース・大谷翔平投手、パドレス・ダルビッシュ有投手らメジャーリーガーの影響もあって、ウエートトレーニングに力を入れる選手は多い。野口氏は「もちろん、投球フォームに支障がない限り、筋肉はあった方がいいのです。パワーが出ますし、怪我の防止にもなりますから。彼ははどこを、どれくらい鍛えればいいのかが、これでわかったのではないでしょうか。高い授業料を払わされたけれど、しっかり勉強できたというところだと思います」と語る。 それにしても、潜在能力あふれる素材だ。190センチ、100キロの体格は、193センチ、95キロの大谷を彷彿とさせる。ストレートの最高球速は、昨年161キロに達し、カーブ、フォークも質が高い。野口氏は「素材としては、日本国内で断トツだと思います。小柄な人には決して出せない角度、大きい腕の振りが生み出す威力があります」と絶賛。来年3月の第6回ワールド・ベースボールクラシック(WBC)に間に合うかどうかはともかく、「いずれは侍ジャパンのエース格になるでしょう」と断言するほどだ。 だとすれば、なおさら、大怪我を避けて大輪の花を咲かせてほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
オリ山下がライブBPに臨むも…右手中指の爪が割れるアクシデント 一瞬、ヒヤリとした空気が漂った。オリックス・山下舜平大投手は宮崎キャンプの11日、今年初の実戦形式となるライブBPに登板したが、右手中指の爪が割れるアクシデントに見舞われ、打者6人に計30球を投げるはずだった予定を打者2人、10球で切り上げた。「国内で断トツの素材」ともいわれる22歳の大器は、今年どんなシーズンを過ごすのか。【PR】盗塁王・近本光司を足元からサポート 中高生に勧めたい新スパイク「NEOCONNECT」 指を気にする仕草を見せた山下のもとへ、コーチとトレーナーが駆け寄る。山下自身は「投げられます!」と“続投”を主張したが、コーチが大事を取った。山下は報道陣に「中指の爪が割れましたが、僕は爪が割れても、マメが潰れても投げられるので大丈夫です」と説明し、「こんなに早く実戦形式で投げられるとは思っていなかった。順調です。ボールが指にかかる感じがありました」と、むしろ表情は明るかった。 このライブBPを、現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が視察した。「投手がこの時期に爪を割ったり、マメを潰したりするのはよくあることです。逆に言えば、ボールがよく指にかかっている証拠で、いいんじゃないですか。痛みを伴っているのなら話は別ですが、本人が『投げる』と言ったくらいですから、大丈夫でしょう」との見立て。「実際、杉本(裕太郎外野手)のバットをへし折るシーンがありましたし、ボールの走り、指のかかりは良かったと思います。昨年のような不振は、もうないでしょう」と評した。 山下は高卒3年目の2023年に9勝3敗、防御率1.61の好成績を挙げ、新人王に輝いた。一方で、8月に腰の張りを訴え、9月には「第3腰椎分離症」で戦線を離脱した。4年目の昨年は14登板で3勝6敗、防御率3.38の不振。10月には第3腰椎分離症が再発し、リハビリを進めていた。大谷翔平を彷彿とさせる190センチ、100キロの体格 なぜ昨年は、思うような成績を残せなかったのか。野口氏は「昨年は、腕の振りが横振りになっていました。本来は縦に割れ、曲がりも大きかったはずのカーブが、スライダーのように横へ曲がっていたのも、横振りが理由だったと思います。今年はライブBPを見た限りでは、縦振りに戻り、しっかり上から叩けていたように見えました」と分析する。 さらに「周辺から『山下は去年、ウエートで胸や肩のあたりに筋肉をつけ過ぎたことが不振の原因だった』と指摘する声を聞きました。確かに僕が1年前の今頃見た時には、ウエートをガンガンやったそうで、凄い筋肉をしていました。今年はそれほどではありません」と付け加える。「本当に不振の要因だったのかどうかはわかりませんが、筋肉が邪魔で腕が上がらなくなり、その結果、横振りになっていたということであれば、納得がいく話です」とうなずいた。 ドジャース・大谷翔平投手、パドレス・ダルビッシュ有投手らメジャーリーガーの影響もあって、ウエートトレーニングに力を入れる選手は多い。野口氏は「もちろん、投球フォームに支障がない限り、筋肉はあった方がいいのです。パワーが出ますし、怪我の防止にもなりますから。彼ははどこを、どれくらい鍛えればいいのかが、これでわかったのではないでしょうか。高い授業料を払わされたけれど、しっかり勉強できたというところだと思います」と語る。 それにしても、潜在能力あふれる素材だ。190センチ、100キロの体格は、193センチ、95キロの大谷を彷彿とさせる。ストレートの最高球速は、昨年161キロに達し、カーブ、フォークも質が高い。野口氏は「素材としては、日本国内で断トツだと思います。小柄な人には決して出せない角度、大きい腕の振りが生み出す威力があります」と絶賛。来年3月の第6回ワールド・ベースボールクラシック(WBC)に間に合うかどうかはともかく、「いずれは侍ジャパンのエース格になるでしょう」と断言するほどだ。 だとすれば、なおさら、大怪我を避けて大輪の花を咲かせてほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)